桜雪の光 33 | 花の兎 雪の兎~オリジナルと2次元 2.5次元BL~

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木刀基本の九 打ち落とし技をして 俺は蹲踞(そんきょ)の姿勢を取った。

 

いったい何度目だろう。

 

数えきれないくらい俺は繰り返している。

 

 

・・・なんで・・・俺はずっと木刀を振り続けているのだろう

 

 

しかし

 

 

・・・え?

 

 

相手もいない形稽古だったのに 正面にだれか立っていた。

 

俺は ゆっくりと剣先(けんさき)をちけて 木刀を床に置いた。

 

 

「・・・・・・っ」

 

 

右ひざを立てて立ち上がり 真正面に立つその人を見つめる。

 

彼は じっと俺を見ていて

 

 

「そろそろ俺の名前を思い出せ」

 

 

と聞き覚えのある声で言ってきた。

 

 

「あなたの・・・名前・・・」

 

「本当にお前は馬鹿だな。俺の名前を忘れるなんて・・・」

 

「・・・・・・」

 

「お前は俺の名前が聞きたかったんだろう? 教えてやったのに忘れてどうする」

 

 

「・・・あ、ら・・・、た、さん?」

 

 

頭に思い浮かんだ名前を口にすると 彼の顔がはっきりと見えた。

 

 

「アラタさん」

 

「・・・戻ってこい。馬鹿犬」

 

 

そう言うと アラタさんは俺に手を差し出した。

 

 

「それともここにこのままいるか? お前がそう望むなら俺はなにも言わないで立ち去る」

 

「そんなこと・・・」

 

 

そんなことするはずない。

 

アラタさんとのたくさんの想い出は「俺自身」なのだ。

 

俺は その差し出された手を強くつかんで彼を引き寄せた。

 

 

「思い出した・・・。あなたは俺の・・・」

 

 

そう言いかけた時 辺りは閃光の雪か花びらのようなモノが舞い散った。