私は茂さんを好きで、
結婚した感じではなかった。
好きは好きだったけれど、
たぶん、その好きは、
恋愛感情ではなかった。

もしあのとき、
ヨーダ、圭人のことを経験せずに、
茂さんだけがポンと出てきていたら、
結婚はおろか、
交際にすら発展しなかったと思う。
もしかしたら、仲の良い、
友達にもならなかったかもしれない。
それくらい彼は
私のタイプでは無かった。

結婚生活を続けていると、
ちょっとずつ嫌な所が見え始めた。
すると、
何でこんな人と結婚したんだろう、
とか冷めた目で見てしまうことも
多くなってきた。
でも何かあれば、茂さんから、
必死に謝られ、修復に向けて、
全力で向き合ってくれ、
私はまたこんな事を
思ってしまう自分が情けなくなって、
更には罪悪感を持ってしまう。

好きにならなくちゃいけない、
好きにならなくちゃいけない、
こんなに愛してくれるのに、
好きになれない私は酷い人間。
こればっかり思っていた。

段々と私は
きつくなってきていた。
自分の気持ちに嘘をついて、
この先何十年も共に生きて
いかなきゃいけないなんて。
たぶんそれは、
親友の美月たちが、
茂さんに「もう、りんは限界だ」と
言っている時期と重なる。

傷が癒えてきて、
少しだけ正常な自分を取り戻すと、
一見尊重されているようだけど、
自由がない事に気がつき、
苦しくなっていった。

そんな前後に弦ちゃんだ。

続く