あらすじ(引用)
>北陸のとある山間部に暮らす和合清深は、漫画を描くことを趣味とする暗い女性。ある日、両親が交通事故死した事を受けて、清深の姉・澄伽が帰省する。澄伽は4年前、女優を目指して上京したが人気が出なかった為に帰省したが、我侭で自意識過剰な性格は相変わらず。そんな姉妹が大騒動を巻き起こす。




テンポよく、映像も整っていると思うが、
見終わったあとの物足りなさは否めない。
所謂メッセージ性というものがない。
だけど、もしかするとそんなものは無いのかもしれない。


登場人物は全員、"イタイ"。
女優を志す自己中の姉、漫画だけが趣味の冴えない妹、
姉妹には気を使い、嫁には辛く当たる兄、
天真爛漫に振舞う孤独な兄嫁。




あらすじには姉妹のことしか書いていないため、
見るまでまったく目を向けていなかったのが
永作博美演じる兄嫁・待子の存在である。


少しずれた性格のために、日常的に夫の気に障ることをしてしまう。
そんな夫に何度手をあげられても天真爛漫に振舞う姿が健気だ。
しかし実際に彼女のような人が傍にいたら
「ちょっと疲れる」と思ってしまうかもしれない、
天然というか、ずれているというか、とにかくちょっと変わった役である。

彼女はコインロッカーベイビー。
作中何度も出てくる「家族」という単語も、
彼女の場合だけ、実にストレートな重みがある。
家族として繋がっていたい、頼られたい、
気の毒に思えてくるほど一心にそれを望んでいる。
これと比較すると、夫・宍道が姉妹に向かって言う
「家族」という言葉のなんと薄っぺらいことだろう。

決して1人で居るのではないのに、
彼女はずっと1人、
やっと繋がったと思ったら、また1人。
彼女は最後の最後まで「裏」が見えず、
何を考えているのかわからないままである。


また、妹・清深が投稿する漫画雑誌が「ホラーM」という雑誌。
この雑誌は実在する。

私の敬愛する漫画家・三家本礼をはじめ、
稲垣みさお、犬木加奈子、渡千枝、
千之ナイフ、御茶漬海苔、蕪木彩子、日野日出志etc.の作品を
初めて目にしたのもこの漫画雑誌だった。
いずれも私の少女時代に濃い影響を与えたものだ。
2010年に休刊してからは書店で見かけることもなくなったが
私にとって思い出深い雑誌である。

作中の漫画は呪みちるによるもの。
ちょっと彼女の作品を集めてみたくなった。