決死のプロポーズ作戦が成功したので、彼女のご両親にごあいさつに行かなければと思った。
「今月中にあみちゃんの家に挨拶に行くから、ご両親の予定を聞いといて」
そう彼女に伝えた。
一週間後の日曜日にあいさつに行く事になった。
とにかく緊張したことを覚えている。
事前に彼女からご両親の事は聞いていた。
お義母さんには、前に会った事がある。
お義父さんは、若い頃は100kmマラソンとか何度も走るスポーツマンだったらしい。
「お義父さんって、怖い人かな?娘はやらん!とか言って殴られないかな。殴られてもいいけど」
「うちのお父さんはそんなことしないよ。定年になってから家でゴロゴロしてるだけだから」
ごあいさつのイメージというと、さだまさしの「親父の一番長い日」のイメージだったので、「わかった娘はくれてやる。その代わり君を殴らせてくれ」ぐらい言われる覚悟で彼女の家に向かった。
彼女の家のインターホンを鳴らした。
「あの、、yoshiと申します。今日はごあいさつにお伺いしました」
玄関のドアが開き、彼女とお義母さんが笑顔で迎えてくれた。
「どうぞ、どうぞ、中へ入って、ほら、あみちゃんスリッパ出して」
和室に通された。
「今、お父さん呼んでくるから、待ってて」
緊張するなぁ、、、。
いきなり「娘さんを下さい」と言うべきだろうか。
それとも少し雑談してからがいいのかな、、、。
和室のふすまが開いて、お義父さんが入ってきた。
にっこりほほえんで、白髪まじりの優しそうな人だった。
「どうも初めまして、あみの父です」
「初めまして、yoshiと申します。あみさんとは三年前からお付き合いさせて頂いております」
いきなり、娘をくれなんて言えないな、、、。
事前にマラソンが趣味と聞いていたので、マラソンの話から入ることにした。
「お義父さん、マラソン走るそうですね。僕、こないだ初めてフル走ったんですよ」
「そうかね!どこの大会に出たの?」
マラソンの話で盛り上がって、その後も世間話をしたが、内容はよく覚えていない。
お茶も、もう三杯は飲んだと思う。
よく見たら一時間半もたってる。
やばい!このままだと世間話しただけで、終わってしまう。
会話が途切れた瞬間、勇気を振り絞って言った。
「お義父さん。今日お伺いしたのは、ほかでもありません。結婚のお許しを頂きたくお邪魔しました。あみさんと結婚させて下さい!よろしくお願いします!」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
お義父さん、お義母さん、あみちゃん、私。
みんな一緒に頭を下げた。
みんなほっとした顔をしてた。
皆、いつ言うか緊張してたんだ。
「この娘は家事もやらせず、甘やかして育てたから大丈夫かな。ねえあみちゃん。あんた頑張らなきゃダメだよ」
「お義母さん、大丈夫ですよ。僕家事好きですから。あみちゃんは場数を踏めば、やれますよ。」
緊張がほぐれて、和やかな雰囲気になった。
「ねえ、お母さん。せっかくだから写真撮って。yoshiちゃんがスーツ着てるの初めて見るから」
えっ?ごあいさつの写真撮るの?
ごあいさつの時、写真ってとるのかな?
一回しか経験がないからわからないけど。
今思えば彼女は大事な瞬間瞬間を、記憶と記録に留めたかったんだと思う。
優しい義両親で良かった。
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