15.ごあいさつ | いつかまた君と会う日のため(自殺・自死遺族ブログ)

いつかまた君と会う日のため(自殺・自死遺族ブログ)

2013年12月、最愛の妻をうつ病による自死で亡くしました。
結婚して1年1ヶ月、あまりにも短すぎました。
体に障害があったけど、懸命に生きていた妻。
妻の事を忘れない為、初めてブログを書きます。

決死のプロポーズ作戦が成功したので、彼女のご両親にごあいさつに行かなければと思った。


「今月中にあみちゃんの家に挨拶に行くから、ご両親の予定を聞いといて」


そう彼女に伝えた。


一週間後の日曜日にあいさつに行く事になった。



とにかく緊張したことを覚えている。


事前に彼女からご両親の事は聞いていた。


お義母さんには、前に会った事がある。



お義父さんは、若い頃は100kmマラソンとか何度も走るスポーツマンだったらしい。



「お義父さんって、怖い人かな?娘はやらん!とか言って殴られないかな。殴られてもいいけど」


「うちのお父さんはそんなことしないよ。定年になってから家でゴロゴロしてるだけだから」



ごあいさつのイメージというと、さだまさしの「親父の一番長い日」のイメージだったので、「わかった娘はくれてやる。その代わり君を殴らせてくれ」ぐらい言われる覚悟で彼女の家に向かった。



彼女の家のインターホンを鳴らした。

「あの、、yoshiと申します。今日はごあいさつにお伺いしました」


玄関のドアが開き、彼女とお義母さんが笑顔で迎えてくれた。


「どうぞ、どうぞ、中へ入って、ほら、あみちゃんスリッパ出して」


和室に通された。

「今、お父さん呼んでくるから、待ってて」


緊張するなぁ、、、。

いきなり「娘さんを下さい」と言うべきだろうか。

それとも少し雑談してからがいいのかな、、、。


和室のふすまが開いて、お義父さんが入ってきた。


にっこりほほえんで、白髪まじりの優しそうな人だった。


「どうも初めまして、あみの父です」


「初めまして、yoshiと申します。あみさんとは三年前からお付き合いさせて頂いております」



いきなり、娘をくれなんて言えないな、、、。



事前にマラソンが趣味と聞いていたので、マラソンの話から入ることにした。


「お義父さん、マラソン走るそうですね。僕、こないだ初めてフル走ったんですよ」


「そうかね!どこの大会に出たの?」



マラソンの話で盛り上がって、その後も世間話をしたが、内容はよく覚えていない。


お茶も、もう三杯は飲んだと思う。


よく見たら一時間半もたってる。


やばい!このままだと世間話しただけで、終わってしまう。


会話が途切れた瞬間、勇気を振り絞って言った。



「お義父さん。今日お伺いしたのは、ほかでもありません。結婚のお許しを頂きたくお邪魔しました。あみさんと結婚させて下さい!よろしくお願いします!」


「こちらこそ、よろしくお願いします」


お義父さん、お義母さん、あみちゃん、私。

みんな一緒に頭を下げた。


みんなほっとした顔をしてた。

皆、いつ言うか緊張してたんだ。


「この娘は家事もやらせず、甘やかして育てたから大丈夫かな。ねえあみちゃん。あんた頑張らなきゃダメだよ」


「お義母さん、大丈夫ですよ。僕家事好きですから。あみちゃんは場数を踏めば、やれますよ。」


緊張がほぐれて、和やかな雰囲気になった。


「ねえ、お母さん。せっかくだから写真撮って。yoshiちゃんがスーツ着てるの初めて見るから」


えっ?ごあいさつの写真撮るの?





ごあいさつの時、写真ってとるのかな?

一回しか経験がないからわからないけど。


今思えば彼女は大事な瞬間瞬間を、記憶と記録に留めたかったんだと思う。


優しい義両親で良かった。



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