Le Petit Cheritane n°16

先へ進むのが勿体ない、その思いをどうにか抑えて今、読んでいる本。

チャールズ・シミック著 柴田元幸 訳「コーネルの箱」、です。
(原題は Dime-Store alchemy:The Art of Joseph Cornell 、雑貨屋で売っているようなものから錬金術の如くに芸術作品を生み出したジョゼフ・コーネルを見事に表したタイトルかも知れません。)

一行一行の味わいの豊かさと深さ。 その静かな興奮と幸福感に、思わずその場でゆっくりと閉じてしまいたくなる。
そんな本です。
あぁ ・・・これは出会えて良かった。しみじみとその思いを反芻することだけを伴侶にワインが進んでしまう、そういう美味しくて幸せで、いい~ 本なんですよ☆ (お料理の本じゃないですよ ^^ )

お盆前後にかけては都心を中心に美術館が比較的空く時期なので、精力的にあちこち出かけていました。
そのうちのひとつ、少し足を伸ばした先で、私は初めて ジョゼフ・コーネルの作品を観ました。

小さな箱の中には無限の小宇宙が広がっていました。
掴めない、けれども近しい。捉えどころのなさと親しさと。
古びれた風合いと魅惑的なモダニスムの織り成す宝箱の世界。
シュルレアリスムと幻想絵画の境界線。
懐かしいものを観ているかのような不思議な感傷と喜びが同時に胸に込み上げて来て、"愛着" が心から溢れて来るような錯覚を感じました。
***

この本は、そのコーネルの作品にチャールズ・シミックが文章を添えたものです。
誌的と言えばそうかもしれないけれど、そこにはナルシスティックな難解さや引っ込み思案な無口さはなくて、心地良い "語り" です。
ジョゼフ・コーネルをよく知る友人と、ゆっくりと当てもなく言葉を交わしながら作品について語り合う。
なんか、そんな感じ。
もちろん「語り合う」 なんて、私の側にはそんなことできる要素は皆無であって、そんなことは全く願うべくもない勘違いな話なのですが( ´艸`;)
しかし、そうと気付かせない不思議な一体感を醸し出しているので、つい思わずそんな気になって、話の流れるままに任せたやりとりを楽しんでいるような気持ちになります。


P.S.
今日は投票日でした。
今日までの間、何となく、色々記事に書きたいことを頭のなかで整理してたりしてて、ふとそんな自分に気付いて笑ったりしていましたが、結局それらを 「書こう」 と思うときは 来ませんでした。

せめて短期政権で終わって。。。