願うものに命を与え、世界の理を創り、人々を導いていた。
ときには、模型のようなものの製作に熱心になり、出来上がると、子供のように喜んだ。
冒険を楽しみ、夢を叶え、自ら正しき者であろうと日々を送っていた。




ある日、自動で動くジェットコースターのようなものに揺られ、世界を巡っていたら、突然現実に引き戻された。
最新のジェットコースターに乗っていたのだ。
スピードの恐怖はなく、世界がいかに素晴らしいか、そして美しいかを、乗っている間に伝えるという、楽しいものだった。
オレの前の席には石橋貴明が乗っていて、いやあジェットコースターで感動したのは初めてだ、と感心していた。




オレの仕事は、音楽プロデューサーで、毎日毎日新たなアーティストを世に送り出している。
奥さんと娘の3人暮らし。
贅沢をするでもなく、偉ぶるでもなく、頭の中には、常に音楽があった。



そんなある日、娘が何やら隠し事をしていることに気づく。
3人なのに、他のものの気配を感じるのだ。
何とか娘を納得させ、部屋のひとつへ案内させた。



すると、声が聞こえる。
あんなに遊んでくれたのに、今は振り向いてもくれない。
このまま忘れられるのは悲しい。
神であった記憶が残っているのか、命あるものならば解放してやろうと思った。



倉庫のような部屋の扉を開けると、そのには在庫が山ほどあるのに、使われていない生活用品が積まれていた。
オレは、声のする方へ手を伸ばす。
それは、トイレットペーパーだった。
オレが触れると、声は鎮まり、あるべき場所へ移動していった。
洗剤や柔軟剤、リップクリームなど、それぞれの場所へ移動していく。
どうやら、犯人は奥さんらしく、使われないまま、次々に買ってくるため、それぞれのものが命あるもののように寂しがって声を出していたのだ。



それを娘が感じ取り、オレには黙っでいた。
もしかしたら、娘も神の力を継いでいるかもしれない。




散らかったCDを片づけていると、プロデュースする約束をしていたアーティストのものが出てきた。
彼女はまだ活動しているだろうか?
あるバンドは、すでに解散していた。
ボーカルの男は、男から見ても美しい顔をしていて、根強いファンが今でもいるそうだ。
まずは、彼女の行方を探さなければいけない。



スタッフには内緒で、昔のCDを集めては、コンピュータに焼いている。
これがバレたら、大目玉は食らってしまう。




iPhoneからの投稿