100例目の法的脳死判定 家族承諾のみで臓器提供へ
2010年9月29日15時50分


. 日本臓器移植ネットワーク(移植ネット)は29日、市立札幌病院(札幌市)に入院中の50歳代の女性が、改正臓器移植法に基づいて脳死と判定され、臓器提供の手続きに入ったと発表した。1997年の臓器移植法施行後、法的脳死判定を受けて死亡が確定したのは100例目になる。

 2000年に愛知県内の病院で患者が法的に脳死と判定された後に臓器提供が見送られたことがあるため、脳死の人からの臓器提供としては今回が99例目になる。今年に入り、脳死の人からの提供は16例目。

 臓器移植法は97年10月に施行され、最初の脳死判定は1年4カ月後の99年2月だった。今年7月の改正法施行までに87例の脳死判定が行われ、そのうち86例が臓器提供に至った。

 改正法施行で提供は急増している。脳死の人からの臓器提供は今回が施行後13例目。そのうち、本人の意思が書面で残されておらず、家族の承諾だけで提供される新しいパターンが今回を含めて12例を占める。従来は、15歳以上の人が、脳死になったら臓器を提供したいという意思をあらかじめ書面に残してあることが必要だった。

 臓器移植法に基づく法的脳死判定では、(1)深い昏睡(こんすい)(2)瞳孔が開いている(3)脳波が平ら、など5項目の基準を満たしているか確認する。これらを6時間以上あけて2回確認した時点で死亡宣告される。

 移植ネットによると、27日に同病院から移植ネットに連絡が入り、家族は28日午後に脳死判定と臓器摘出の承諾書を移植ネットに出した。同病院で女性の脳死判定が行われ、29日午前9時14分に2回目の脳死判定が終わって死亡が確定した。女性はくも膜下出血で治療を受けていた。

 家族は心臓、肺、肝臓、腎臓、膵臓(すいぞう)、小腸の提供を承諾した。心臓は大阪大付属病院で10歳代男性に、肺は東北大病院で20歳代女性に、腎臓の一つは札幌北楡(ほくゆ)病院で40歳代男性に、もう一つの腎臓と膵臓は東北大学病院で60歳代男性に、それぞれ提供される。小腸は医学的理由で提供を見送った。