Q&A175 薄毛か性機能か | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q1 20代男性、薄毛に悩んでおり、以前プロペシア(1mg/日)を1年間程服用しました。服用前の血液検査等でプロペシアが効きやすい体質とのことでした。家系的にみてもそうだと思います。副作用等は実感がなかったのですが、男性不妊等の情報が気になり、1年程で服用をやめ、それから現在までの1年間はノコギリヤシのサプリメントをのんでいます。しかし、やはり薄毛は徐々に進行しているみたいで、プロペシアの服用を再検討しており、将来結婚して子作りの期間だけ服用をやめれば・・・と考えていたのですが、ポストフィナステリド症候群についての情報が気になってます。ポストフィナステリド症候群について先生の意見を御伺いしたいです。また薄毛や皮脂、加齢臭等は命に関わる症状ではないとは理解できますが、やはりどうしても健康的には見えません。もちろん、生物学的に個人差があるのは自然なことでしょうから、これらは受け入れるしかないのでしょうか。

Q2 男性型脱毛症に対してフィナステリドやデュタステリドの5α還元酵素阻害薬(5ARI)を服用されてる方が多いようですが、これらの薬剤は元々が前立腺肥大症に対するもので、その目的は前立腺の縮小です。そこで質問なのですが、男性型脱毛症に対して用いるとき、患者さん(特に若年層)は前立腺に問題がないケースがほとんどだと思いますが、その場合、前立腺や精巣等が縮小してしまい機能不全に陥るというリスクはないのでしょうか。また、そうなった場合服用を中止すればそれらは回復するものでしょうか。

A 質問を受けて論文を調べてみました。その結果は、本日の記事、2013.12.11「☆ポストフィナステリド症候群」を参照してください。

フィナステリド(プロペシア)もデュタステリド(アボルブ)も5α-還元酵素阻害薬(5ARI)で、テストステロン(T)をジヒドロテストステロン(DHT)に変換する酵素をブロックしますが、このブロックの効力は想像以上に大きく、しかも長期に渡り持続するようです。投与中も投与中止後も、勃起障害、性欲減退、オルガズム低下、性機能低下、自尊心低下、QOL低下、親しい人間関係の維持の低下、抑うつ、憂うつ、自殺企図、酒に弱くなるなどが持続します。現在のところ、どのような方がPFSになるのかについては明らかではありませんので、5ARIを使用する際にはそれなりの覚悟が必要です。

5ARI以外では、2013.8.18「☆プロペシア以外の育毛剤やハーブの影響は?」に記載したように、「ノコギリヤシ」が最も影響力が少ないですが、それでも精子の状態は悪くなります。育毛と性機能は両立せず、「反対のベクトル」を向いているものとお考えください。

また、5ARI内服により前立腺が縮小すると精液量が減少しますので、投薬中は精液の量が少なくなります。これが持続するかについて記した論文はまだありません。

下記の記事も参考にしてください。
2012.10.7「育毛剤の精子(精液)への影響は?」
2013.8.24「アボルブ、知ってますか?」