Q&A959 ☆ヘパリン使用について | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 第1子は主人の精子が少なかったため顕微授精で授かりました。私は不育症でヘパリン注射、バイアスピリン服用でした。
主人の精子の状態は毎回不安定で、かなり悪い時もありますが、いい時もあり、自然に妊娠することも可能だと言われています。現に流産しましたが、自然妊娠したこともあります。
第2子はそんなに焦らず、自然や人工授精にトライしてもいいかなと考えています。

Q1 自然、人工授精の場合、私はいつからヘパリン注射、バイアスピリンを始めたらいいのでしょうか。たとえは、性交した日なのか、それよりも前からなのか、着床頃なのか。
Q2 精子が少ない場合でも禁欲期間は短くした方がいいのでしょうか。
Q3 不妊治療クリニック卒業の後、ヘパリンを続けてたのですが、産科の主治医から「ヘパリンは有効ではないと論文が出たのでやめませんか」と提案がありました。もう34週になっていましたし、主治医の判断でヘパリンをやめたのですが、ヘパリンは有効ではないという論文が本当に出たのでしょうか。

A
A1 どの段階がクリアできていないかによります。たとえば、妊娠判定が出ないなら着床期から、胎嚢確認ができないなら判定日から、心拍確認ができないなら胎嚢から、という具合です。文面からは着床期からの使用が良いと思います。
A2 精液量が極端に減らない限りは短くした方が良いです。
A3 これは誤解されている医師が多いところです。論文を表面的にさらっと読むだけでは、ヘパリンの効果が否定されたと思えてしまうからです。
ヘパリンには低分子ヘパリンと未分画ヘパリンの2種類があり、これを分けて考える必要があります。低分子ヘパリンの効果ははっきり否定されていますが、未分画ヘパリンの効果は否定されていません。欧米では低分子ヘパリンばかり使用されており、そのエビデンスが蓄積されています。しかし、日本では、妊娠中の低分子ヘパリンの使用が禁忌となっているため、未分画ヘパリンが使われています。発表された論文をよく読むと、未分画ヘパリンの効果は肯定的です。しかし、ヘパリンというジャンルでひとくくりにしてしまうと、症例数が少ない未分画ヘパリンのデータがマスクされ、効果なしとなります。このため、米国生殖医学会は否定し、米国生殖免疫学会はそれに反対するという構図が10年以上続いています。この状況を打開するためには、未分画ヘパリンを使っている日本からのデータが必要です。

下記の記事を参照してください。
2015.7.22「☆へパリン治療の有効性」