Q&A433 卵管因子でのタイミングの意味は? | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 36歳、卵管因子、化学流産→子宮外妊娠→化学流産→流産
自己タイミング1年半で妊娠→化学流産

これをキッカケに病院へ通う事になりました。不妊歴は長いのですが、体外受精に至るまで、遠回りをしてきました。タイミング療法を5年くらい。何故かと言うと、踏ん切りがつかなかったのです。

検査では、右卵管閉塞の疑い、クラミジア陽性。ジスロマック治療後も血液検査では陽性。細胞を採取してからの検査は陰性、定期的に検査していますが、現在も血液検査では陽性が出ます。片方の卵管が通ってると言うことで長い間タイミング療法できましたが、3年前に腹腔鏡検査を受けました。その結果、右卵管は閉塞、癒着の為に卵管が屈折していました。虫垂炎(盲腸)の手術(破裂寸前)を17歳の時にしており、そこがかなり癒着していたそうです。右卵管周囲の癒着剥離をしました。左卵管は通っている事を確認でき、自然妊娠も望めるとの見解でした。しかし、左卵巣がやや小さめと言われるました。

術後すぐ、左からの排卵で自然妊娠→右卵管膨大部妊娠となり、右卵管切除。

それから2年間、自然周期でのタイミングをするも妊娠に至らず、人工授精を3回した後、体外受精にステップアップしました。

①採卵5個、受精5個、胚盤胞3個、胚盤胞凍結2個、新鮮胚盤胞移植1個→化学流産 
 融解胚移植1個→陰性 
 もう1個の卵は融解時に駄目になる
②採卵4個、受精4個、胚盤胞2個、胚盤胞凍結1個、新鮮胚盤胞移植1個→妊娠6週で流産 
 1個凍結胚が残っていますが、しばらく移植を休もうと思っています。

年齢が年齢なので長期休むつもりはないのですが、休む間はタイミングを頑張ってみようかと思っています。今まで長い間タイミングを行ってきましたが、すべて自然周期でのタイミング。高温期にはデュファストンまたはhCG注射のみです。2回クロミッドを服用したのですが、副作用が出てしまいNGとなりました。他の薬で卵巣刺激するのかと思いきや、ずっと自然周期でした。3回の人工授精も自然周期でした。現在、右卵管がなく、左卵管は通っているものの、卵管内はどうなっているか正直わかりません。この事からタイミングをしても意味がないのでしょうか。私としては、卵巣刺激して卵を数個育ててからのタイミングまたは人工授精をすると可能性があるかもしれないと考える時があります。

A 卵管を使っての妊娠の確率は極めて低いとは思いますが、ゼロではないでしょう。もし体外受精のお休み期間に何らかの治療を行うとすれば、hMG注射による排卵誘発を行い、左の排卵(1~2個)を目指す作戦しかないと思います。

時間は戻せませんから、早めの体外受精が必要であることに疑いの余地はありあません。その際には、化学流産と流産で合計3回ありますので、ぜひ不育症検査を行った上での治療をされることをお勧め致します。

また、クラミジアの血液検査は抗体を見ていますので、治療後に消えることはありません(風疹の抗体検査を考えてみればわかります。風疹にかかる→抗体ができる→風疹にかからない)。終生免疫ができる風疹との違いは、クラミジアは何回でもかかる可能性があるということです。

私にできることは、「時間を無駄にしないように」と切に願うことだけです。