「着床の窓」について | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

2014.8.7「☆☆着床の窓はいつ開く?」、「着床の窓」についての質問が多数あり、一部誤解もあるようですので、補足致します。

Q1 34歳、新鮮胚移植2回、胚盤胞移植2回いずれも良好胚をしていますが、妊娠判定時にhCGが毎回0です。主人は中度の男性不妊で、ふりかけと顕微授精をしています。ただ、自然妊娠でも可能性はある程度、と言われます。着床の窓ですが、極端な考えかもしれませんが、ステップダウンをして自然妊娠をトライした方が、タイミングが自動的に身体の中で合う可能性は高まるのでしょうか。通院している病院では、移植周期の個別化は考えていないで、胚盤胞は5日目という決まりで移植している感じです。今度ずらしてもらえるか相談しようとは思います。

Q2 42歳、体外受精7年目、良好胚移植を続けていますが、陰性が続いています。
分割胚1個戻し1回、6日目1個胚盤胞戻し3回、5日目と6日目胚盤胞2個戻し8回。
最近は5日目胚盤胞5AAと4ABのペアを3回しています。移植合計12回(採卵は、23回)
自力排卵をしてますが、ホルモン補充でやったり自然周期移植をやったり、色々と試してます。
論文は、ホルモン補充周期移植の5日目6日目7日目という話ですよね。自然周期移植方も場合もこれに含まれているのでしょうか。
自然周期移植は、排卵を基準に5日目が基本としているクリニックが多いと思いますが、日本哺乳動物卵子学会31巻2号によると、5日目より4日目の方が上手くいくとあります。13回目の移植は、こちらを(排卵後4日目)試してみようと思っていたので動揺しています。ホルモン補充と自然周期移植の差なのでしょうか。

Q3 2年以上も一度も陽性反応が見られず、今回の胚移植も不安しかないため、着床率を上げる方法はないのかと悩んでいます。お伺いしたいのですが、SEET法や二段階胚移植法も着床の窓を開くために有効なのでしょうか。

Q4 今回の記事では、着床の窓が後ろにずれている人が70%いて、そうなると流産するということでしたが、その対処法はないと言うことでしょうか。私は反復流産しておりますが、毎回心拍確認後の成長が遅いです。何か影響があるのでしょうか。

A まず、2014.8.7「☆☆着床の窓はいつ開く?」の記事を「新しい治療の可能性」に分類しているように、これはまだ実用的な段階ではありません。

要点を整理します。
1 現在のところ、論文を発表したスペインの施設でのみERAテスト(着床時期を調べる検査)が可能です。→当院を含め、現在のところ日本では検査できません
2 ERAテストは、良好なトップグレードの胚を移植しても結果が全く出ない方(判定陰性か化学流産のみ)を対象にしたものです。→不育症(習慣流産)の方での検討は行われていません
3 論文でご紹介したERAテストは、ホルモン補充周期の胚移植に限定したものです。→自然周期移植や自然妊娠(タイミング、人工授精)の場合に「着床の窓」がいつ開くのかは検討されていません。SEET法や二段階胚移植法で「着床の窓」が変わるのかは検討されていません
4 論文で示した経過のように、最初から着床の時期がズレていると判断しているのではなく、下記①②③の手順を追って検査•治療を行い、最終的に移植の日をズラす作戦をとるのが最善策と考えます。
 ①不育症検査および治療
 ②子宮因子(子宮鏡検査による、内膜ポリープ、粘膜下筋腫、子宮奇形、子宮内癒着など)の除外および治療
 ③様々な移植パターンのトライ(新鮮初期胚移植、新鮮胚盤胞移植、凍結融解初期胚移植、凍結融解胚盤胞移植、自然周期移植、ホルモン補充周期移植)
①②③を行っても妊娠しない場合に、初めて移植の日をズラす作戦を行う価値があると思います。