☆ICMART最新レポート | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

ICMART(国際ART監視機関)では、各国の体外受精の成績を国際比較したレポートを毎年発表しています。本論文はその最新レポートです。ただし、まとめるまで時間がかかるため、最新版とはいえ2007年のデータです。

Fertil Steril 2015; 103: 402
要約:世界55カ国から得られた2007年の体外受精•顕微授精のデータをまとめました。採卵は1,251,881周期を超え、 229,442人の赤ちゃんが誕生しました。採卵の実施件数は、人口100万人に対し、12~4,140件と国によりおよそ350倍の違いがあり、このうち65.2%は顕微授精を行なっていました。新鮮胚移植による出産率は採卵あたり20.3%、 凍結融解胚移植による出産率は移植あたり18.4%、1回の採卵による累積出産率は25.8%、流産率20.6%でした。単一胚移植は新鮮胚移植の23.4%に留まり、76.6%は複数の胚を移植していました(平均移植個数2.16個)。このため、ふたご率22.3%、みつご率1.2%となりました。
新生児死亡率は、1000分娩につき新鮮胚移植で19.9、凍結融解胚移植で9.6でした。40歳以上の方は19.8%を占め、前年の調査の15.5%を4.3ポイントも上回りました。
なお、日本のデータは、160,556周期、新鮮胚移植による出産率は採卵あたり8.3%、 凍結融解胚移植による出産率は移植あたり19.5%、1回の採卵による累積出産率は16.0%、流産率29.7%でした(平均移植個数1.68個)。

解説:驚かれるかもしれませんが、ICMARTのレポートによると日本の成績は55カ国中最下位です。このカラクリは3点あります。まず、順位付けは採卵あたりで行なっているため、自然周期系のクリニックが多い日本では移植数が採卵の約半数になってしまいますが、この部分は加味されず採卵あたりの出産率で比較しています(単純計算で2倍にすると他の国と同等になります)。次に、日本ではドナー卵子を取り扱っていませんので、高齢の方が多くなり、出産率が低下します。単一胚移植にいち早く取り組んだ日本では通常1個の胚を移植しますが、第1位の米国では2~3個の胚を移植するのが普通です。

2年前のICMART最新レポートも参照してください。
2013.5.19「ICMART最新レポート」