人工授精でも早期P4上昇は妊娠率低下につながる | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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本論文は、人工授精における早期P4上昇と妊娠率の関連を検討したものです。

Fertil Steril 2015; 104: 879(スペイン)
要約:2012~2013年に人工授精を行った2458組の夫婦を対象に、トリガーの日のP4濃度と妊娠率の関係を後方視的に検討しました。rFSH製剤1日50~100単位を用いた卵巣刺激を行い、トリガーにhCGを使用して人工授精を実施、12日後のhCG採血で妊娠判定しました。トリガーの日のP4濃度は、E2増加に伴い上昇しました。P4>1.1 ng/mLの場合に、妊娠継続率が有意に低下し、流産率が有意に増加しました。

解説:これまで、体外受精の新鮮胚移植周期におけるP4増加が着床率低下につながることが知られていましたが、人工授精では検討されていませんでした。本論文は、人工授精でも早期P値上昇は妊娠率低下につながることを示しています。しかし、後方視的検討のため、因果関係を示すものではなく、単に関連を示しているに過ぎないのでご注意ください。

体外受精周期におけるP4増加は、卵子の質には影響しないことが明らかにされています(P4増加した周期から得られた胚は、新鮮胚移植では妊娠率が低下し、凍結融解胚移植では妊娠率が低下しないため)。P4増加では、内膜構築のスピードが速くなり、胚の成長と内膜の成長が同期しないため、妊娠率が低下する、つまり着床環境の悪化によるとされています。本論文は、人工授精でも同様にP4増加と妊娠率低下を示していますが、この現象が、早発LHサージによる卵子の質の低下なのか、P4増加による着床環境低下によるのかは不明です。