コレステロール低下には亜鉛も有効 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

本論文は、亜鉛と脂質代謝の関連をメタアナリシスにより検討したものです。

 

Nutr Metab 2015; 12:26(スリランカ)

要約:2014年12月までに亜鉛サプリメントと脂質代謝の関連について検討した24論文、14,515名をメタアナリシスにより解析しました。亜鉛投与量は15〜240mg/日であり、亜鉛投与により、総コレステロール10.9mg/dL減少、LDLコレステロール6.9mg/dL減少、中性脂肪10.9mg/dL減少、HDLコレステロール2.1mg/dL増加を認めました。亜鉛が脂質代謝改善に有効であるという結果が得られました。

 

解説:亜鉛欠乏症はおよそ1/3の方にみられ、亜鉛欠乏を原因とした死亡は1.4%との報告があります。亜鉛は、様々な酵素の機能に関与しており、亜鉛欠乏は、吸収障害症候群、慢性肝炎、慢性腎障害、鎌状赤血球貧血、糖尿病、悪性腫瘍との関連が示唆されています。動物実験では、亜鉛欠乏は大動脈の構造に変化をもたらし、脂肪や炭水化物の代謝に悪影響となるほか、血管内皮細胞が酸化ストレスに弱くなるとされています。ヒトでは、亜鉛不足と糖尿病、心疾患、高血圧、高脂血症の関連が報告されています。これまで、亜鉛サプリメントの有効性については賛否両論あり結論が得られていませんでした。本論文は、メタアナリシスにより亜鉛が脂質代謝改善に有効であることを示しています。私たちが着床障害との関連で注目している亜鉛が、このような形で論文になっていることに驚きを感じるとともに、亜鉛と生命維持のメカニズムといった本質的な部分への関与を感じずにいられません。