ビタミンD製剤は、不育症治療に有用? | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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本論文は、ビタミンD製剤が不育症治療に有用であることを示しています。

 

Am J Reprod Immunol 2017; 77: e12620(中国)

要約:8〜10週齢妊娠ICRマウスを、対照群、ビタミンD投与群(25μg/kg)、リポポリサッカロイド(LPS)投与群(150μg/kg)、LPS+ビタミンD投与群の4群に分け、検討しました。なお、LPSは妊娠7日目から投与開始し、ビタミンDは妊娠5日目から投与開始しました。LPS群の62.5%が流産となり、他群より有意に高くなりました。しかし、LPS+ビタミンD投与群では流産率14.3%と改善が認められました。また、ビタミンD投与により、LPSで増加したTNFα、 IFNγ、MIP2、NO、COS2、PGF2α、NKκB p65が減少(正常化)しました。

 

解説:リポポリサッカロイド(LPS)はグラム陰性桿菌の細胞膜の構成成分であり、炎症性腸疾患や大量の飲酒の際に腸管から血液に吸収されます。血液中のLPSは細菌性膣症の方に多く見られ、LPSの暴露により、妊娠経過不良になることが知られています。また、動物実験では、妊娠初期のLPS暴露は初期流産になること、妊娠中期のLPS暴露は神経系や骨格系の異常をきたすこと、妊娠後期のLPS暴露は子宮内胎児死亡(IUFD)や子宮内胎児発育遅延や早産になることが報告されています。初期の研究では、ROS(活性酸素)がLPSによる上記の変化に重要であると考えられていました。LPSによる大量のROSが妊娠経過を悪化させていいるという報告がある一方で、TNFα、 IFNγ、IL8を介したした経路が重要ではないかとの報告もあります。最近、ビタミンDの抗炎症作用と抗酸化作用が注目されており、LPSのマイナスポイントを打ち消すのではないかとの考えの元に本研究がおこなわれました。本論文は、ビタミンD製剤が不育症治療に有用であることを示しています。