甲状腺機能と胎盤機能 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

甲状腺機能は妊娠と密接な関係があります。本論文は、甲状腺機能と胎盤機能についての新しい知見を示したものです。

 

Hum Reprod 2017; 32: 653(オランダ)

要約:2002〜2006年に分娩予定日の方7069名を対象に、甲状腺機能(妊娠9〜17週のfT4とTSH採血)と胎盤機能を前方視的に検討しました。胎盤機能は、妊娠中期(妊娠18〜25週)と妊娠後期(妊娠25週以降)の2回、ドップラー超音波で臍帯動脈拍動係数(PI)と子宮動脈抵抗係数(RI)を測定し評価しました。fT4は妊娠中期及び後期の臍帯動脈PIと正の相関を示し、妊娠中期の子宮動脈RIとも正の相関を示しました。また、甲状腺機能は、妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)の10.4%に、子宮内胎児発育遅延の12.5%に関与していました。

 

解説:甲状腺ホルモン受容体は胎盤に存在し、正常な甲状腺機能が胎盤形成に必要であることが知られています。胎盤形成に関与する甲状腺ホルモン関連因子として、アンギオゲニン、VEGF、IL10、TNFα、EGFが存在します。甲状腺機能低下は早産に、甲状腺機能亢進は妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)や子宮内胎児発育遅延に関連することも報告されています。これらの事実から、甲状腺機能は胎盤形成の調節を担っているのではないかと考え、本論文の検討が行われました。本論文は、甲状腺機能と胎盤機能について明確な関連性を示しています。妊娠を目指す女性は、甲状腺機能を適切な数値に保つことが必要です(TSH 0.35〜2.50)