☆胚移植ガイドライン:ASRM | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

米国生殖医学会(ASRM)から、胚移植ガイドラインが発表されましたので、ご紹介いたします。

 

Fertil Steril 2017; 107: 882(ASRM)

要約:現在ある胚移植に関するエビデンスをエビデンスレベルの高いものから順番にご紹介します。

 

A 根拠十分

 1 超音波カイド下の移植が妊娠率と出産率を向上させる

 2 柔らかいカテーテルでの移植が妊娠率を向上させる

 3 胚移植後のベッド上安静は不要

B 根拠中等度

 1 胚移植前後の鍼灸は出産率を向上させない

 2 TEAS(経皮的低周波ツボ通電法)が治療成績向上に有効であることを示したRCT研究が1つあるが、その真偽については現段階では断定できない。

 3 移植前後の抗生剤投与は妊娠率を向上させないことを示したRCT研究が1つあるが、その真偽については現段階では断定できない。

 4 パウダー入りの手袋が妊娠率に悪影響を与えないことを示したRCT研究が1つあるが、その真偽については現段階では断定できない。

 5 胚移植の際の頸管粘液の除去が妊娠率と出産率を向上させる

 6 胚移植のカテーテルの位置が着床率と妊娠率に影響を与える(子宮中央から奥で底部から1cm以上手前が良い)

 7 胚移植後は、速やかにカテーテルを除去するのが良い(静止時間は不要)

 8 移植後のカテーテル先端に頸管粘液が付着していても、事前に除去できていれば、妊娠率と出産率は低下しない

 9 胚移植の際にカテーテルに胚が残っていても、すぐに2回目の胚移植ができれば、着床率、妊娠率、流産率には影響しない

C 根拠不十分

 1 胚移植の際の麻酔は推奨される(されない)

 2 胚移植の際のマッサージは推奨される(されない)

 3 胚移植の際の漢方薬は推奨される(されない)

 4 胚移植が難しい患者さんのみに超音波カイドで移植するのは推奨される(されない)

 5 胚移植のカテーテルのベストポジションがある(ない)

 6 移植後のカテーテル先端に血液が付着している場合に、着床率と妊娠率は低下する(しない)

 7 胚移植の際の胚の注入速度に推奨されるスピードがある(ない)

 

解説:以上のエビデンスを踏まえた、現段階でのお勧めの胚移植法は次のようになります。

 1 超音波カイド下で

 2 頸管粘液の除去を行い

 3 柔らかいカテーテルを用い

 4 子宮中央から奥で底部から1cm以上手前に移植し

 5 速やかにカテーテルを除去する

なお、鍼灸、麻酔、マッサージ、漢方薬、抗生剤、移植後のベッド上安静の有効性は証明されておりません。