☆胚移植の個数に関するガイドライン:ASRM | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

米国生殖医学会(ASRM)から、胚移植の個数に関するガイドラインが発表されましたので、ご紹介いたします。

 

Fertil Steril 2017; 107: 901(ASRM)

要約:ASRMでは移植胚の上限の個数として下記を提言します。

 

 年齢    <35歳  35〜37歳  38〜40歳  41〜42歳             

分割胚

 正常胚    1     1      1      1

 良好胚    1     1      3      4

 その他    2     3      4      5

胚盤胞

 正常胚    1     1      1      1

 良好胚    1     1      2      3

 その他    2     2      3      3

 

ただし、上記の個数でなかなか妊娠しない場合は移植数の増加もありですが、その場合には、多胎妊娠のリスクも増加します。合併症や持病などその他の疾患のために多胎妊娠が許容できない場合には1個胚移植となります。上記の上限を超えて移植する場合には、その理由を診療記録に明記してください。また、43歳以上のデータは不十分のため、ここには記載していません。ドナー卵子の場合にはドナーの年齢が該当し、凍結胚の場合には採卵時の年齢が該当します。

 

解説:本ガイドラインは、2013年に発表されたものの改訂版であり、多胎妊娠を避けるのが主目的です。これまで米国では、初回採卵での新鮮胚2個移植がスタンダードでしたが、本ガイドラインにより是正されるようです。日本では、世界に先駆けいち早く単一胚移植が行われてますので、多胎妊娠が世界一少なくなっており、諸外国では「日本を目指そう」という機運が高まっています。大変望ましい現象だと思います。なお、諸外国ではPGSにより正常胚移植をするのが当たり前になっていますので、PGSは認めないという日本の現状とは大きく異なっています。