健康な女性におけるビタミンDと妊娠の関係 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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本論文は、健康な女性におけるビタミンD摂取量及び血中ビタミンD濃度と妊娠成立の関係を前方視的に調査した初めての報告です。

 

Fertil Steril 2017; 108: 302(米国)

要約:2006〜2012年に米国の3箇所の施設で、健康妊娠歴のない18〜39歳の女性132名を対象に、ISISスタディー(Lifestyle and Fertility Study)を実施しました。ビタミンD摂取量は電話インタビューで行い、0、3、6ヶ月の3ポイントで実施し、10 μg/日(米国人の1日の必要量)をカットオフとして評価しました。血中ビタミンD濃度(25-OH-VitD)はスタート時(0ヶ月)に行い、50 nmol/Lをカットオフとして評価しました。その後の妊娠に到るか12ヶ月後まで追跡調査を行いました。女性の37.1%はビタミンD摂取量が不足しており、13.9%が血中ビタミンD濃度が不足していました。妊娠率は、ビタミンD摂取量不足群(49.0%)と比べビタミンD摂取量充足群(67.5%)で有意に高く(オッズ比2.26倍)、血中ビタミンD濃度不足群(38.9%)と比べ血中ビタミンD濃度充足群(64.3%)で有意に高く(オッズ比3.37倍)なっていました。

 

解説:ビタミンD欠乏と男性不妊、女性不妊、不育、妊娠中の合併症との関連はよく知られていますが、健康な女性における検討はありませんでした。本論文は、健康な女性においても、ビタミンD摂取が妊娠成立に重要であることを示しています。どなたもビタミンD採血が望ましいでしょう。

 

なお、本論文では、20 ng/mL (50 nmol/L) をカットオフとして評価していますが、現在は30 ng/ml (75 nmol/L) 以上が妊娠を目指す場合に必要な量とされています。