本論文は、ビタミンD濃度と体外受精の成功率の関係についてメタアナリシスを実施したものです。
Hum Reprod 2018; 33: 65(英国)doi: 10.1093/humrep/dex326
要約:ビタミンD濃度と体外受精の成功率に関する11論文2700名の女性を対象にメタアナリシスを実施しました。なお、ニューキャッスル・オタワスケールにより論文のクオリティーが高いもののみを対象としました(7点以上)。25ヒドロキシビタミンD(25OH-VitD)濃度が不十分(20~30 ng/mL)あるいは不足(<20 ng/mL)の方と比べ、十分(>30 ng/mL)な場合には、下記の項目で有意に良好な結果となりました。
論文数 患者数 オッズ比
出産率 7論文 2026名 1.33倍
妊娠判定陽性率 5論文 1700名 1.34倍
臨床妊娠率 11論文 2700名 1.46倍
なお、流産率には有意差は認められませんでした。
解説:英国では、2014年に52,288名の女性が67,708件の体外受精を行いました。成功率は36.3%、年々徐々に改善は見られますが、依然として確率は満足のいくものではありません。近年、生殖医療におけるビタミンDの重要性が明らかにされるにつれ、ビタミンD不足の方が極めて多い(20〜52%)現状が問題であることが知られるようになりました。ビタミンDは、卵胞発育、着床、胎盤形成に重要な役割を担っていることが判明し、妊娠治療のみならず、不育治療、妊娠中の合併症(妊娠高血圧症候群、低体重児)の予防に繋がるのではないかと考えられています。本論文は、ビタミンD濃度と体外受精の成功率の関係についてメタアナリシスを実施したものであり、ビタミンD不足は体外受精の出産率や妊娠率に有意に悪影響をもたらすことを示しています。ビタミンD濃度の検査は採血のみであり、治療もサプリメントで補うだけですので、非常にやりやすいものです。なお、治療効果の判断については、大規模な前方視的検討が必要です。
ビタミンDは皮膚で作られるため、ビタミンD不足の最大の理由は日光に当たらない現在の生活習慣にあるとされています。もちろん、食生活の影響も考えられます。25ヒドロキシビタミンD(25OH-VitD)濃度は、内分泌学会では、不足<20 ng/mL、不十分20〜30 ng/mL、十分>30 ng/mLとし、Institute of Medicine (IOM)では、欠乏<12 ng/mL、不足12〜19 ng/mL、十分>20 ng/mLとしています。いずれも、毒性>150 ng/mLとしています。なお、妊娠に必要な25OH-VitD濃度は、通常前者の基準を用いています。
下記の記事を参照してください。
2017.10.20「ビタミンD不足と不妊の関係」
2017.8.20「健康な女性におけるビタミンDと妊娠の関係」
2017.8.18「ビタミンDの効能:妊娠免疫の観点から」
2017.3.20「ビタミンD製剤は、不育症治療に有用?」
2016.12.8「☆ビタミンDの卵胞発育促進作用」
2016.12.5「☆不育症とビタミンDの関係」
2016.12.4「☆ビタミンD製剤はいつ服用すればよいか」
2016.3.31「妊娠中のビタミンD大量投与」
2014.10.26「☆ビタミンD不足だと妊娠率が低下する」
2014.4.7「☆ビタミンD不足で着床障害になる?」
2014.3.17「☆ビタミンD欠乏は不育症のリスク因子です」
2013.2.25「白人ではビタミンD濃度が高いと体外受精の妊娠率がよい」
2012.12.10「ビタミンDの効用 妊娠•授乳編」
2012.12.8「☆ビタミンDの効用 女性編 」