☆妊活前の25OHビタミンD濃度と妊孕性 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

本論文は、妊活前の25OHビタミンD濃度と妊孕性に関する前方視的検討です。

 

Hum Reprod 2019; 34: 2163(米国)doi: 10.1093/humrep/dez170

要約:2010〜2016年に妊活歴3ヶ月未満の女性522名(30〜44歳)を対象に、25OHビタミンD濃度を測定した後に妊活を行うとともに、性器出血の有無を記録していただき、妊娠判定陽性あるいは最大12ヶ月まで前方視的に追跡調査しました(Time to Conceive study)。なお、性器出血の記録から、周期数を割り出しました。257名(49%)の方が期間内に妊娠に至り、平均年齢は33歳、平均25OHビタミンD濃度は36 ng/mLでした。25OHビタミンD濃度が10 ng/mL増加する毎に、妊娠率は10%増加しました。25OHビタミンD濃度が30〜40 ng/mLの方と比べ、20 ng/mL未満では妊娠率が0.55倍に、50 ng/mL以上では妊娠率が1.35倍になりました。妊娠までに6ヶ月以上を要したのは、25OHビタミンD濃度が20 ng/mL未満で51%、30〜40 ng/mLで28%、50 ng/mL以上で15%でした。

 

要約:近年、生殖医療におけるビタミンDの重要性が注目されています。ビタミンD欠損マウス、あるいはビタミンD受容体欠損マウスでは、卵胞発育が停止し、子宮は低形成となり、不妊になることが報告されています。ビタミンD無添加食で育てたラットは、不妊あるいは小さい胎児を出産します。ヒトでは、ビタミンD濃度が高いほどART成績が良好であること、PCOSの方にビタミンDを投与すると自然排卵が起きること、ビタミンD濃度低下では生理不順になること、妊娠治療を実施していない場合でもビタミンD濃度が高いほど妊孕性が高いことが報告されています。本論文は、このような背景の元に行われた前方視的研究であり、妊活前の25OHビタミンD濃度が高ければ高いほど自然妊娠の可能性が高くなることを示しています。なお、過剰摂取を心配される方が少なくありませんが、25OHビタミンD濃度の過剰量は200 ng/mL以上ですので、決して到達できない濃度ですからご安心ください。

 

下記の記事を参照してください。

2019.3.9「☆ビタミンDによる子宮筋腫の治療効果

2019.2.24「ビタミンDでTh1/Th2が改善する!?

2019.2.9「ビタミンD補充のガイドライン

2019.2.7「☆ビタミンDと生殖

2018.11.14「ビタミンDと不育症

2018.10.12「ビタミンDは卵巣予備脳とは無関係

2018.2.25「ビタミンDによる胎盤形成作用の基礎的検討

2018.1.20「ビタミンD濃度と体外受精の成功率の関係:メタアナリシス

2017.10.20「ビタミンD不足と不妊の関係

2017.8.20「健康な女性におけるビタミンDと妊娠の関係

2017.8.18「ビタミンDの効能:妊娠免疫の観点から

2017.3.20「ビタミンD製剤は、不育症治療に有用?

2016.12.8「☆ビタミンDの卵胞発育促進作用

2016.12.5「☆不育症とビタミンDの関係

2016.12.4「☆ビタミンD製剤はいつ服用すればよいか

2016.3.31「妊娠中のビタミンD大量投与

2014.10.26「☆ビタミンD不足だと妊娠率が低下する

2014.4.7「☆ビタミンD不足で着床障害になる?

2014.3.17「☆ビタミンD欠乏は不育症のリスク因子です

2013.2.25「白人ではビタミンD濃度が高いと体外受精の妊娠率がよい

2012.12.10「ビタミンDの効用 妊娠•授乳編

2012.12.8「☆ビタミンDの効用 女性編