☆ビタミンDと無症状の子宮筋腫の関係:横断研究 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

本論文は、ビタミンD濃度と無症状の子宮筋腫の関係についての横断研究です。

 

Fertil Steril 2021; 115: 1288(中国)doi: 10.1016/j.fertnstert.2020.12.001

Fertil Steril 2021; 115: 1175(バングラデシュ)コメント doi: 10.1016/j.fertnstert.2021.02.040

要約:2017〜2020年に婦人科を受診した閉経前無症状子宮筋腫をお持ちの方133名を対象に、25OHビタミンD濃度について子宮筋腫のない80名と比較しました(横断研究)。結果は下記の通り(有意差ありを対応する色で表示:赤字、青字)。

 

25OHビタミンD 子宮筋腫なし  子宮筋腫あり

全症例       16.8 ng/mL    12.1

40歳以下      15.1      11.6

41歳以上      19.0      12.2

 

ロジスティック回帰分析の結果、子宮筋腫のリスクは、年齢と正の相関オッズ比1.2)、25OHビタミンD濃度と負の相関(全症例でオッズ比0.8、症例と対照がマッチした症例でオッズ比0.6)を示しました。無症状の子宮筋腫のリスクとなる25OHビタミンDのカットオフ値は、14.34 ng/mLでした(それ以下で筋腫のリスク増大)。

 

解説:疫学(統計)調査からビタミンD不足と子宮筋腫の関連が示唆されていますが、これまでは主に症状のある子宮筋腫の方を対象にした研究でした。本論文は、ビタミンD濃度と無症状の子宮筋腫の関係についての横断研究を行ったものであり、加齢因子と独立して、ビタミンD濃度低下(<14.34)と無症状の子宮筋腫の有意な関連を認めています。本論文の著者は、ビタミンD濃度測定を、子宮筋腫のリスク評価に加えても良いのではないかとしています。

 

コメントでは、ビタミンD濃度低下と子宮筋腫のリスク増加は多くの疫学研究で報告され、ビタミンDサプリによる治療効果について実験では証明されていること、しかしながらヒトでの実際の投与についてはデータが不十分であることを指摘しています。子宮筋腫に対して、ビタミンDの最適な投与量や予防効果が明らかになれば、全世界の女性にとって極めて朗報になります。

 

ビタミンDと子宮筋腫については、下記の記事を参照して下さい。

2021.2.19「☆ビタミンDによる筋腫の治療:その3

2020.3.3「☆ビタミンDによる筋腫の治療

2019.3.9「☆ビタミンDによる子宮筋腫の治療効果

2019.2.7「☆ビタミンDと生殖

 

子宮筋腫の治療については、下記の記事を参照してください。

2020.11.17「☆新しい筋腫の治療

2020.1.18「子宮筋腫治療におけるユリプリスタールの新たな作用機序

2019.11.18「アソプリスニルの有効性と安全性:長期投与

2019.3.10「子宮筋腫治療の新薬:ビラプリサン

2018.12.30「☆スタチン製剤が筋腫の治療に有効!?

2018.9.29「ユリプリスタールの肝障害について

2018.5.9「子宮筋腫治療における子宮温存方法の比較

2016.4.20「FUSによる子宮筋腫治療の効果

2014.12.11「子宮筋腫の新たな治療戦略

2013.9.30「☆子宮筋腫と妊娠