環境ホルモンと子宮筋腫発生 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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本論文は、環境ホルモンと子宮筋腫発生に関するコホート研究です。

 

Fertil Steril 2021; 116: 1590(米国)doi: 10.1016/j.fertnstert.2021.07.003

要約:2010〜2012年に米国ミシガン州デトロイト近郊で23〜35歳1693名黒人で子宮筋腫のない方を対象にした、子宮筋腫発生に関する前方視的研究(Study of Environment, lifestyle, and Fibroids = SELFスタディ)を実施しました。20ヶ月毎に通院し、60ヶ月まで、超音波検査による子宮筋腫の有無の確認と尿中の環境ホルモン濃度を測定しました。環境ホルモンは、7種類のフェノール、4種類のパラベン、そしてトリクロカルバンです。統計学的手法として、Cox比例ハザードモデルを用いて解析しました。尿中の環境ホルモン濃度は、子宮筋腫発生と負の相関を示しましたが、関連は弱く、必ずしも均一ではありませんでした。ビスフェノールSとブチルパラベンは子宮筋腫発生有意な負の相関を示し、2,4-ジクロロフェノールとブチルパラベンは子宮筋腫縮小有意な正の相関を示しましたが、その他の環境ホルモンでは有意な関連を認めませんでした。

 

解説:子宮筋腫は女性で最も多い良性腫瘍であり、女性ホルモン依存性のため、女性ホルモン作用のある環境ホルモンと子宮筋腫発生や増殖との関連が推察されます。フェノール、パラベン、トリクロカルバンは様々な商品に含まれており、米国では暴露の機会が極めて高いものです。しかし、これらの環境ホルモンと子宮筋腫発生や増殖との関連については賛否両論があり結論が出ていませんでした。本論文は、環境ホルモンと子宮筋腫発生に関するコホート研究であり、一部の環境ホルモンでは子宮筋腫発生や増殖に抑制的に働き、多くの環境ホルモンでは関連を認めないことを示しています。今後も引き続き研究が必要な分野です。

 

下記の記事を参照してください。

2019.1.30「フタル酸と筋腫の関連 その2

2017.5.11「フタル酸と子宮筋腫の関連