本論文は、PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)におけるBMIと体重減少の効果に関する検討です。
Hum Reprod 2023; 38: 471(英国)doi: 10.1093/humrep/deac267
要約:英国のデータベース(GOLDデータ)から、PCOSと診断された18〜45歳の女性で、スタディ1 9955名(BMI>18.5)とスタディー2 7593名(BMI>25)を対象に、最初の妊娠までの期間(TTP)をもとにした妊娠率を後方視的に検討しました。結果は下記の通り(有意差の見られた項目を赤字表示)。
スタディ1 妊娠率 3年間の累積妊娠率
BMI オッズ比(信頼区間)
18.5〜24.9 〜(基準) 41%
25.0〜29.9 0.92(0.80〜1.04) 34%
30.0〜34.9 0.68(0.59〜0.78) 28%
35.0〜39.9 0.57(0.49〜0.66) 24%
40.0〜 0.37(0.31〜0.44) 17%
スタディ2 妊娠率(オッズ比)
15%減量 10%減量
BMI 30 1.65 1.35
BMI 40 2.20 1.68
BMI 50 2.90 2.00
解説:これまでにオランダから、BMI増加による妊孕性低下に関する2つの研究が報告されています。また、メタアナリシスでもBMI増加による妊孕性低下が報告されています。本論文は、このような背景のもとに行われた研究であり、PCOSにおけるBMIと体重減少の効果に関する二つのスタディを実施したところ、BMIが高いほど妊娠率が低下し、BMIが高い女性は減量の程度が大きいほど妊娠率が増加することを示しています。
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BMIについては、下記の記事を参照してください。
2023.3.3「☆母体BMIと周産期予後:自然妊娠 vs. ART妊娠」
2023.1.12「ART治療や母親の肥満とお子さんの健康状態の関連」
2022.12.14「肥満マウスの食事療法で卵子の質が改善」
2022.12.13「肥満で子宮内膜のタンパク質の発現パターンが変化」
2022.12.12「肥満で卵胞液中のタンパク質の発現パターンが変化」
2022.10.14「☆ライフスタイルによる体重減少の効果:メタアナリシス」
2022.4.25「☆女性のBMIは異常胚とは無関係」
2021.12.5「BMI増加で胚盤胞発生動態は?」
2021.11.21「☆BMI高値で不育症リスクが増加!?」
2021.9.28「BMI高値は受精卵の染色体異常とは無関係」
2021.7.21「☆女性の肥満で流産率が増加」
2021.5.5「女性のBMIは卵子に影響?着床に影響?」