帝王切開瘢痕部嚢胞性腫瘤切除術:ビデオ論文 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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本論文は、帝王切開瘢痕部に嚢胞性腫瘤を伴い長期の出血に悩まされていた女性の手術治療を紹介したビデオ論文です。

 

Fertil Steril 2023; 120: 922(中国)doi: 10.1016/j.fertnstert.2023.07.013

目的:帝王切開2回と人工妊娠中絶2回を経験した38歳の女性が、2回目の帝王切開直後から10年間に渡り不正性器出血を訴え来院されました。漢方薬やホルモン剤による治療が奏功せず、帝王切開瘢痕部に4.0cmの嚢胞性腫瘤を伴っていたため、腹腔鏡+子宮鏡による治療を計画しました。以下が手術の手順です。

 

1 腹腔鏡:帝王切開瘢痕部から膀胱を剥離し、膀胱を下方に移動

2 帝王切開瘢痕部の正確な位置は、腹腔鏡+子宮鏡によって確認

3 嚢胞性腫瘤は帝王切開瘢痕部の右側に存在し、子宮内と交通があることを確認

4 子宮鏡手術により帝王切開瘢痕部表面の炎症性結合組織を除去(切除+凝固)

5 腹腔鏡手術により嚢胞性腫瘤を切除、嚢胞内は血液が貯留し子宮内膜様組織を肉眼で確認

6 腹腔鏡手術により帝王切開瘢痕部をマットレス2層縫合で閉鎖(1-0吸収糸)

7 前屈子宮にするため、両側円靱帯を短縮

 

嚢胞性腫瘤内部は子宮内膜組織と同じであることが確認されました。また、術後の子宮鏡検査で帝王切開瘢痕部の消失を確認し、創部筋層の厚さは3.0mmから9.1mmに改善しました。

 

解説:本論文は、帝王切開瘢痕部に嚢胞性腫瘤を伴い長期の出血に悩まされていた女性の手術治療を紹介したビデオ論文です。子宮内膜組織を伴う嚢胞性腫瘤内から流出する血液により持続的な不正出血を引き起こしていたものと考えます。