Q&A3830 ☆人工授精での着床の窓は? | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q ホルモン値が良かったため、遺残卵胞を採卵することになったところ、採卵日に排卵してしまっていたため、人工授精に切り替わりました。内膜の厚さは生理が十分に出なかったため、問題を保留するとして、着床の窓はこの場合どうなるのでしょうか。遺残であっても、排卵したらそこからホルモン値でカウントされるのでしょうか。着床は可能なのでしょうか。

 

A みなさん勘違いされているようですが、着床の窓が意味を持つのは「胚移植」の場合のみです。

 

タイミングや人工授精の場合には、卵管膨大部で受精してから卵管をゆっくり移動し、7日後に着床します。着床の窓の検査でズレがある方でも、タイミングや人工授精で普通に妊娠されますので、おそらく受精卵が卵管を移動する際に子宮内膜と情報を共有し合って、内膜のスピードを調整しているのではないかと、私は考えています。従って、(遺残卵胞と思われた卵胞だったとしても)通常通り排卵日に人工授精を行っていただくのが正解です。

 

しかし、「胚移植」の場合には、受精卵は卵管に存在せず、培養器の中にあります。そして、突然子宮に入ってきます。内膜のスピードを調整する時間的猶予がありませんので、内膜のスピード(準備状態)と胚のスピード(着床できる状態)が合っていなければ着床できません。

 

つまり、タイミングや人工授精では、着床の窓を考慮する必要はありません

 

下記の記事を参照してください。

2021.6.19「Q&A2965 人工授精での着床の窓は?

 

なお、このQ&Aは、約3週間前の質問にお答えしております。