最近読んでよかった本 181 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

最近読んでよかった本を簡単に紹介します。

なお、紹介の順番は五十音順にしています。

 

私のブログでは月2回本の紹介をしています。

何故本を紹介しているかについては、2016.9.29「「最近読んでよかった本」の新たな効能?「ニュートラルな気持ち」へ!」をご覧ください。

 
 
「白バイガール」佐藤青南
神奈川県警の「本田木乃美」は箱根駅伝の先導を目標に白バイ隊員になった。しかし白バイの仕事は違反者に罵られ、自信を失っていく。一方、同僚の女性白バイ隊員の「川崎潤」は強気だ。そんな中、不可解なバイク暴走死亡事故が発生した。木乃美たちが背景を調べ始めると、思いがけない事件との接点が明らかになる。迫力満点の追走劇の描写はさすがです。
 
 
「ファーストラヴ」島本理生

都内キー局アナウンサーの二時面接の日、試験の途中で退出し、父親で画家の「聖山那雄人(ひじりやまなおと)」の勤務先である美術学校に向かい、父親を刺殺した女子大生「聖山環菜(かんな)」。この事件は、環菜の美貌のためマスコミで大きく取り上げられた。なぜ彼女は父親を殺さなければならなかったのかと。事件を題材としたノンフィクションの執筆を依頼された臨床心理士の「真壁由紀」と、環菜の弁護をすることになった弁護士「庵野迦葉(あんのかしょう)」。迦葉は由紀の夫で写真家の「真壁我聞(がもん)」の弟であったため、由紀と迦葉は協力して、環菜とその関係者に何度も面会を重ね、事件の真相を探っていく。環菜の過去、父親との関係、母親との関係が明らかにされていく。由紀の過去や迦葉の過去を比較しながらの構成が随所にみられ、重い内容にもかかわらず一気読み必至です。何がファーストラブなのか、それは本当にファーストラブなのか、自分と向き合うことを教えてくれます。直木賞受賞作、北川景子主演で映画化されました。

 
 
「物件探偵」乾くるみ
高利回りのマンションのオーナー生活が4ヵ月で終了、新幹線の座席が残された部屋、HDDに覚えのない録画、バルコニーに鳩の死骸、訳ありの部屋などのお話が6話。格安や駅近などの好条件に隠された謎を、宅地建物取引を極める「不動尊子(ふどうたかこ)」が解明する、不動産ミステリです。
 
 
「ホワイトバグ 生存不能」安生正
グリーンランド、アフガニスタン、中国など世界各国の極感地帯では、全ての内臓を失った人間の死体が山のように築かれていた。山岳ガイドの「甲斐」と二人の学者が、日本政府からその調査を任される。その原因は「ホワイトバグ=白い虫」。虫たちは、物凄いスピードで殺戮を繰り返し、全世界をパニックに陥れる。日本に上陸するまであと1週間。さて、3人はホワイトバグを退治することができるのか。「アルマゲドン」的な展開とわかっていながらも、手に汗握る攻防に一気読み必至です。パニックホラーは安生正が一番です。
 
下記の記事を参照してください。
 
 
「夜の国のクーパー」伊坂幸太郎
釣船が転覆し目覚めると、「私」は身体を蔓で縛られ、身動きが取れない上、灰色の猫「トム」が人の言葉で話し掛けてきた。猫曰く「僕の住む国の戦争が終わった」と言う所から始まる、不思議な世界観のSFファンタジー。猫の世界では「クーパー」という杉の樹の化物が存在し、鼠も猫も人の言葉を喋る。戦争、支配、権力、恐怖を、猫と鼠の関係性になぞらえる。猫視点で物語が進むことにより、読者は人間の恐ろしく醜くく、それでいて尊さも知る。最後に登場人物の関係全てがひっくり返り、伏線は見事に回収され、痛快な気持ちになる作品です。