Q&A3998 正常胚移植に向けて | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 二人目、凍結胚移植を検討しています。

高齢であることからリスクを考え不安も大きく、知識をご拝借できればと思いコメントに至りました。

38歳 PGT-A済、正常胚を2個凍結しています。どちらもグレードはよくありません(5日目3BC、5日目3AC)
39歳 3BC胚を自然周期で移植→女児出産に至りました。
移植前に簡単な不育検査(血液)と子宮内フローラの検査をしています(どの項目も問題なしでした)。
現在41歳 二人目を考えるなら早く動かなくてはならない年齢なのは分かっていますが、妊娠時の酷い悪阻、産後の貧血等(一時は輸血が必要な数値に)やはり出産は命懸けだなと身を持って知り、当然前回の妊娠より更に高齢ですから、一人目をありがたく授かれた分余計に私が倒れてしまうわけにはいかないと思う恐怖が強くなり葛藤しています。それでも、大切な正常胚。再び出産に至れるかも分かりませんが、もう一度頑張ってみようかと考えています。

①凍結胚は38歳時点の正常胚ですが、母体の年齢は最短で41歳(もう少し後になる可能性もあります)。理論上、閉経後の女性でも凍結胚があれば妊娠自体は可能と聞いたことがありますが、着床率、妊娠中予後、出産自体のリスクはやはり正常胚であっても年齢と共にどんどん増えるのでしょうか。その場合、どの程度の数字でリスクは増えていくのでしょうか。女性は35歳から高齢妊娠と言われ、遺伝子疾患含め流産等のリスクがガクガクっと増えていくこは理解していますが、正常胚移植の場合もある一定の年齢を超えるとガクガクっと悪くなっていくのでしょうか。
②上の質問と被りますが、正常胚移植時の年齢別の成績はあくまで遺伝子起因の流産率が減るだけと考えるべきでしょうか。
③年齢別の流産率、着床、出産の成績はよく見かけますが、PGT-A後正常胚移植での年齢別の成績があまり見つけられません。正常胚移植時の着床、妊娠、出産成績や付随するトラブルの%、出産時母体のリスクなどの成績や統計の論文等はありますか。松林先生の書かれた過去記事で見逃していたら申し訳ありません。その場合どの記事か教えていただけると有難いです。
③5日目3BC正常胚で妊娠に至る事ができましたが、次回の5日目3AC胚はグレード的な妊娠率としては初回と大差ないと考えておいた方が良いでしょうか。
④前回の妊娠と同じ方法が必勝法と松林先生のブログでよくお見かけしていますが、次回妊娠時も高齢であっても自力排卵がある限り、自然周期移植で試みるべきでしょうか。
⑤移植前は前回した血液検査とEMMAを再度するべきでしょうか。

 

A 

①ホルモン補充周期移植は、そもそも閉経後の女性のために開発された方法です(ドナー卵子による受精卵)。その際の妊娠率が非常に良かったため、排卵がある女性にも行われるようになりました。したがって、加齢による妊娠率低下はありません(正常胚移植の場合にも同様です)。しかし、加齢による妊娠合併症の増加、出産リスクが増加します。
②③正常胚であれば、加齢による妊娠率低下はありません。加齢による流産率増加もありません。下記の記事を参照して下さい。

2023.10.18「☆PGTの臨床成績:日本の多施設共同研究」臨床妊娠率と流産率は、母体年齢にかかわらず一定

2023.9.9「☆PGT-Aによる単胎妊娠の周産期予後」単胎妊娠の周産期予後はPGT-Aの有無によらず同等

2023.8.10「☆母体年齢は正常胚移植の妊娠成績に影響するか:メタアナリシス」正常胚移植でも母体の加齢で少しずつ妊娠率が低下

2023.5.17「PGTで生まれたお子さんの健康状態:国家規模のデータベース調査」早産と前置胎盤が多いがお子さんの健康状態はOK

2014.6.19「子宮の老化はありますか?」ドナー卵子の場合、45歳以上の女性では妊娠率や生産率が低下
③その通りです。
自然周期移植が良いでしょう。
⑤移植前に引っかかっていた項目は検査した方が良いですが、引っかかっていなければ不要です。

 

なお、このQ&Aは、約3週間前の質問にお答えしております。