AMHとビタミンDの関係 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

本論文は、AMHとビタミンDの関係ついての横断研究です。

 

Fertil Steril 2024; 121: 642(米国)doi: 10.1016/j.fertnstert.2023.12.023

要約:2010〜2012年23〜35歳の子宮筋腫のないアフリカ系アメリカ人あるいは黒人1,593名の女性を対象に、25OHビタミンD濃度AMH値測定を行い、その関連性を検討しました(SELFスタディ、the Study of Environment, Lifestyle and Fibroids)。70%の女性の25OHビタミンDは20ng/mL未満(ビタミンD欠乏症)でした。結果は下記の通り(全ての項目で有意差はみられませんでした)。

 

全症例

25OHビタミンD 症例数  AMH増加率(95%信頼区間) P値

<12ng/mL    466        基準値

12~20      648     7.5%(-3.7〜20.0)   NS

20~30     348     6.6%(-6.5〜21.6)   NS

30≦       131     11.2%(-7.4〜33.7)   NS

NS=有意差なし

 

サブグループ解析       AMH < 0.7 ng/mL             AMH > 7.8 ng/mL

25OHビタミンD 症例数  AMH値(95%信頼区間) P値   症例数  AMH値(95%信頼区間) P値

<12ng/mL    44       基準値           46       基準値

12~20      41    0.63%(0.40〜0.99)  NS    62    0.93%(0.61〜1.41)  NS

20~30     21    0.60%(0.34〜1.07)  NS    30    0.82%(0.49〜1.37)  NS

30≦       10    0.76%(0.35〜1.65)  NS    16    1.42%(0.74〜2.72)  NS

NS=有意差なし

 

解説:ビタミンD受容体は、卵子、顆粒膜細胞、子宮内膜、胎盤など生殖に関わる組織に認められます。また、ビタミンD受容体はAMH遺伝子のプロモーターに存在しており、AMH発現調節への関与が示唆されています。しかし、ビタミンDとAMH値の関連については、賛否両論があり、一定の結論に至っていません。このような背景の元に本論文の研究が行われ、有意差はありませんが、25OHビタミンD濃度が高いとAMH値がわずかに高くなることを示しています。しかし、本論文は横断研究であるため、結論を導くためにはランダム化試験が必要です。

 

下記の記事を参照してください。

2018.10.12「ビタミンDは卵巣予備脳とは無関係