■予想外のチェルシー

モウリーニョが(恐らく)オーナーの我がままで去ったあと、チームは混乱していた。
だが、周囲の予想を覆し、いまや2冠を手に入れそうな勢いである。
一体 なにがあったのか?

チーム力は変わっていない。
シェフチェンコなど、巨額な移籍に対してチームにフィットしてない選手が居ることも同じだ。
選手層は元々十分にあった。

変わったのは一つだけである。
「グラント監督」になった。

サッカーだけでなく、どんな仕事場でも「マネージャー」「コーチ」といった役割は意外に重要である。

よくスポーツでは「モチベーション」という言葉を使う。
これは簡単に言うと「やる気」みたいな言葉だ。

まさか数億の金を貰っている選手が、チャンピオンズリーグの準決勝の舞台で「モチベーションが上がらない」なんて事は無い・・・と普通は思う。

しかし、よく考えると意外とそうでも無いと気付く。
モチベーションには自ら望んだ結果を得ようとする「内的」なものと、外から与えられた目標や結果を達成しようとする「外的」なものがある。

内的要因は言うまでもなく、いいプレーをしたい、賞賛を得たい、評価されたい、といったサッカー選手としての当たり前のモチベーションがあるだろう。

外的要因としては、その舞台が大きいことや、優勝がかかった試合など、その試合の規模や雰囲気が影響すると思われる。

そして、この外的要因の大きな要素を占めるのが実は「監督」だったり「オーナー」だったりするわけだ。

社会人でも、上司に不満がある人はモチベーションが上がらないだろうし、プロジェクトの雰囲気が悪いと頑張る気にもなれないものだ。
いい大人が、立派な社会人が「やる気が起きません」なんて言うはずない!というのは妄想であって、僕らも普通にやる気が起きないのは当たり前だ。

これが超一流のサッカー選手でも同じなんだろうと思う。
モチベーションなんて管理されなくても、、と思うが、「上がムカツクからやる気ねーよ」っていう 普通の感覚が サッカー選手だってあるんだろう。

だからこそ監督にはモチベーション管理という才能も必要なんだろう。

監督という職業は実に多彩な才能を要求される。
・選手の把握(主力、控え、移籍を踏まえた検討)
・戦術の浸透
・試合中の采配
・モチベーション管理

一時代を築いたレアルマドリッドを率いたデルボスケはスター選手にストレス無くプレーさせることで(出来るだけ規律を簡単にすることで)選手自身の質の高さを引き出して勝利を得た。

逆に日本を率いたトルシエなんかは、ケースごとに動きを細かく指示し、選手の能力不足を組織で補うことで結果を出した。
そして結果を出すことでモチベーションも上がったのだろう。

どちらにも共通して言えるのは、選手のモチベーションが非常に高かったことだ。

そして前述のグラント監督である。
彼はあまりメディアでは喋らない。
当たり障りのない言葉が多く、ベンゲルやモウリーニョがやり合っていた頃に比べると正直 影が薄い。

だが きっと これが良いのだろう。

今年のチェルシーは混乱の年だった。
その混乱を収拾し、選手本来のパフォーマンスを引き出すには、実はグラントのような「当たり障りの無い」監督が打ってつけだったのかもしれない。
元々は黙っていても強いチーム・選手達である。
黙っていれば宿題をやる子たちなんだろう。
それをとやかく言うと、「やる気なくなるし!」みたいなことになるのかもしれない。

笛を吹かずに躍らせる 事が 一番の良薬だったとは・・・


そして最後にふと思うのは我らが日本代表である。
オシム入院に端を発した混乱を収拾したのは、やはり「当たり障りの無い」岡田監督であった。
だがチェルシーと大きく違ったのは、笛なしに踊れる選手が居なかったことだ。
この点はジーコも読み間違えた。

日本の技術は大きく上がったかもしれないが、言わなければ宿題をしないのが日本人だったんだ。

言われてない事をする(100%自分の責任になること)から避ける・・
保守的な考えではサッカーは勝てない・・・


仕事の上では正しい判断を出来る上司が居て、その判断通りに動くことが良しとされる・・・


個人的には チェルシーのようなプロ集団になりたいものだ。