チェルシー - リバプール (1-1)→(3-2)

■雑感
運命はチェルシーに傾いた。
ここ数年、チャンピオンズリーグでの異常な強さと運を持っていたリバプールを打ち破ったのは、ドログバとランパードであった。

肉親を失った悲しみを乗り越えて、延長戦で決めたPKは、後世に語り継がれるほどの名場面であった。
とても普通の神経で居られる場面では無いにもかかわらず、いつもと同じように右隅に強く、鋭いシュートを決めたランパードの精神力の強さを褒めないわけにはいかないだろう。

また、両FW(ドログバ、Fトーレス)の勝負強さも非常に際立っていた。互いにチャンスが少ない中でも得点を挙げ、エースとしての存在感を見せていた。

■試合総評
試合は前半からチェルシーペースで進む。
リバプールはF・トーレスのみが脅威を与えていたが、シュートチャンスは殆ど無く、前半30分過ぎには順当にドログバが先制点を挙げた。
カルーのシュートのこぼれ球に素早く走りこんだドログバは、ゴール右から、角度の無い隙間を強烈なシュートでGKを破った。

前半はこのままチェルシーペースで終了。
ランパード、バラックらの中盤もようやくここに来て連動した動きが見えるようになり、エッシェンの相変わらずの怪物ぶりも健在であった。
対して、リバプールは攻撃の形が見えなかった。

だが、後半試合は唐突に動き始めた。
ベナユンが普段見せないようなドリブル突破を見せ、右サイドから中央に切り込んで行く。
慌てたチェルシーDFはもっとも危険なFWを一瞬だけフリーにしてしまった。
中央でパスを受けたF・トーレスはフリーになれた1秒の間に前を向いてトラップし、滑り混みながらも冷静にゴール右隅に流し込んで同点。
まさにストライカーとしての動きであった。

ここから試合は膠着し、見所は無いまま後半が終了した。
勝負は延長戦へともつれ込んだ。

■チェルシーの強さ
延長戦はチェルシーが強さを見せ付けた。
圧倒的なボールキープからやや強引ながらも力強く、素早い攻撃を繰り出す。
スペイン辺りのチームと違うのは、多少強引でも前へいく強さがあるところであり、綺麗に繋ごうとする余り、手数が増えて攻撃が遅れてしまうバルサやレアルには無い力強さを感じた。

そしてCKのこぼれ球からエッシェンがミドルシュートを突き刺す。
完全にゴール!と思われたが、ゴール前に残っていたドログバがGKの視界を塞いだとしてオフサイド。
まだリバプールに運があるかと思われたその直後、この試合途中出場していたベテランのヒーピアがバラックの足を引っ掛けてPK。

そして前述のランパードのゴールが生まれた…

キャプテンマークの代わりに黒い喪章を身につけていたランパードは、その喪章とともにピッチにうずくまり、感極まった様子でゴールの歓喜と、訃報の感傷に浸っていたように見えた。

そしてチェルシーは無類の強さを見せる。
さらにアネルカの突破からの低いクロスをドログバが強烈なシュートで3-1。
多少コースが甘くても、完全にミートされたボールを至近距離で止めれるGKは居ないだろう。


延長後半にはエースF・トーレスを交代させたリバプール。
試合はここで終わった…

終了間際にはバベルが強烈なミドルシュートを放ち一矢報いる。
意地のゴールであった。

そして試合は3-2で終了。
チェルシーは、チームとしてのまとまりが出てきており、先週末リーグ戦で破ったM.ユナイテッドと 決勝を戦うことになった。

近年まれに見る、本当に「強い」チーム同士の決勝…
巧いだけではなく強いチームだけに、見所は少ないかもしれないが、木刀で殴りあう大味な(派手な)試合ではなく、真剣で切り合う、一瞬のミスが命取りとなるような、緊張感のある試合となるだろう。