日本 VS オマーン (3-0)

■総括
ひとまず「力量の差」をそのまま結果に出せた事は進歩と言える。
だが、細かい点を見ていけば、あくまでも「技術の無い相手だから出来た事」を積み重ねての得点だとわかる。

この戦い方は格下相手のW杯予選(それも3次予選まで)なら、かなりの結果を残せるだろうが、やはりW杯本大会では何も望めない。

結局は指揮官含めて、W杯で勝つ という経験に乏しいため、強豪相手にどういうことをやればいいのか?というビジョンが無いのだろう。
前任のオシムにはソレがあった。

本大会で力を発揮するような青写真を描きつつ、目前の勝利も目指していた。
今は目前の勝利しか見えてないのだろう。。。

皮肉にも選手も同様の気持ちのようで、勝たないと後が無いとは言え、時差と暑さで全く動けないオマーン相手にプレゼントのような2点を貰って こんなに喜んでていいのか?と 不安になる。

ともあれ 眼前の悲観は無くなった。
アウェーの2連戦を乗り越えれば最終予選進出は問題ないだろう。

一つ不安が消えれば一つ不安が出てくるものだが、結局ジーコ時代と同じく、いつのまにか「W杯出場が目標だった」ということにすり替わって、本大会が無残なことにならないでほしいものだ。

■戦評
前半は日本が落ち着いたパス回しを見せる。
先日書いたコラムのように、今度は相手が3mの距離でも日本に脅威を感じミスを連発したお陰で、簡単にマイボールにすることが出来た。
このお陰でボールポゼッションを優位に進めることができ、雨中の芝でも50-50のボールはことごとく日本ボールになるという楽な展開。
その中でも細かいところを無理にキープする場面も目立った。
ちょっとでも強い相手だと出来ないようなボールキープだが、この日のオマーン相手には利いていた。

そして予想通り、早々にセットプレーから先制点を上げると、DFラインがばらばらなオマーンの隙を付いてトゥーリオがFWの位置まで押し上げ、中村からのロングボールを大久保に落として2点目。
1点目はセットプレー時のマークの弱さ。
2点目は背の違いは仕方ないとしても、落とされたボールに対するGK、DFの反応がありえないほど緩く、時間的にクリアできるタイミングなのに大久保の突進を許し、ゴールされるという体たらく。

このレベルが相手では評価が難しいが、玉田が良く前線で起点になっていたのと、松井、中村、長谷部、遠藤らの頻繁なポジションチェンジが利いていた。
とくに中村は圧倒的な技術で困ったときの拠り所になると共に、無理なパスよりも、DF力の無い相手を見据えて早めに勝負パスを出すなど、試合展開を読んだプレーを披露。
スコットランドでの「優勝」の経験は伊達ではなかった。

後半はその中村が松井のカットからのパスを受けて中央で素晴らしいフェイントで右足に持ち替えてミドルシュート!
3-0になった日本は無理に攻めず、香川を試し、巻、今野らを投入し無難に逃げ切った。

希望が持てるほどではないが、このレベルが相手でやれる事をやりきった結果は手にした。
SBも右の駒野の安定感と長友のデビュー間もないと思えないほどのハマリっぷりは期待が持てる。
技術的には相変わらず?だが、長友はレギュラー確定とも思える安定感を披露した。
次のステージに行くための事前準備だけは出来たようだ。

■選手評価
楢崎 5.5 
無難。だが、キックに安定感無く、パンチングも不安定。

長友 5.5 
加地くん2号。運動量は凄まじい。ボールコントロールもそこそこだが、クロスの精度は? そんな機会自体が少なかったのでその部分の評価は保留か。

中沢 6.5 
得意のヘディングで先制。守備でもまったく決定機を作らせず安定。

田中 6.5
得意のオーバーラップで1アシスト。守備も破綻せず。
ビルドアップには不満が残るが。

駒野 6.0
2度あったクロスは完璧に合わせてきた。
やはり右サイドだと活きる。

長友 5.5
攻守に走り回ったが、どうも守備のときに一発で行くクセは不安。
攻撃時の技術は見えない。
それでもサイドで起点になる動き、忠実なオーバラップと安定した動きを披露。

今野 -
短い時間ながら守備では安心して見ることが出来た。

遠藤 4.5
ちょっとサボり気味か。
それとも松井、大久保がウラに飛び出してばかりでバランスを取ったのか。
その中でも得意のCKでアシストは見事だが、、、

松井 4.0
ポジションチェンジも多くアシストも記録。
だが無理なパスも目立ち、後半は消える場面も。
もう少し中心選手なプレーを見たい。
攻守に自分から仕事を探す姿勢がないと厳しい。

長谷部 6.0
攻守を繋ぐリンクマンとして機能。
相手が相手だけに守備も破綻せず。
松井、大久保のあおりを受けて縦への突破を見せれなかったのは不運。

中村 6.5
表のMVP。安定したキープとブレないパス。
勝負パスにゴールと一人で試合を作り、一人で決めた。
常にパスレシーブの動きを見せ続け、周囲を見ながら繋ぎ合わせる動きは傲慢プレーな人に見習ってほしい。

大久保 5.0
ゴールは流石だが、相手のプレスの弱さに助けられた面も。
ボール絡みでは走るものの起点になるべき動きが少なく前線の蓋になっていた。
攻守に自分から仕事を探す姿勢がないと厳しい。

香川 5.5
自分の持ち味は出せたか。
この展開では楽にプレーできたとは言え、物怖じしないのは頼もしい。
ただ、既存のメンバー以上の何かが出せたか、については未知数。

玉田 6.0
ゴールこそなかったが、組織プレーと個人プレーを巧く使いわけていた。
FWの中では期待が持てる。

巻 -
いつもの運動量を見せたが、それだけだった。


■選手総評
とにかく「見える場面での運動量」は 格段に上がったものの、中盤のキープ時に(要はウラを狙えないときの)中盤、前線のサボり具合は幻滅だった。

中村、長谷部が居たお陰で中盤の統制がかろうじて取れていたが、大久保、松井、遠藤には、 もっと無駄な走りこそ大事という事に気づいてほしい。

目立つプレーをするための走りこみやチェイシングは出来て当然だ。

そこに気付かないとこのフォーメーションは成り立たないだろう。
相手のレベルが低いからこそ通じるプレーだったという事だ。


巷では 欧州製の融合、やら TVに移るシーンでの動きの多さを取り上げるのだろうが、本質をちゃんと報道してほしい。

そこまでサッカーがわかってるTV局などないんだろうけど。
だからこそ まだまだ日本は発展途上なのだろう。

ともかく最初の危機は去った。
だがこのままでいいわけでも無い。