2023.6.3

サガン鳥栖対横浜FC

2-1(長沼2)



~ポゼッションという言葉の呪い


この日はココ最近のスタメンを踏襲

ただし右SBには原田が入った。

左SBには菊地。田代山崎のCBコンビは変わらず。

ボランチに入った手塚のお陰で河原は仕事がしやすそう。


左の岩崎で崩して右の長沼で仕留める形は完成度が上がってきた。


森谷と小野は本当にプレスの掛け方が上手い。

バランスも良く、後ろの様子もしっかり確認しながらプレスに行く。


と、ここまで書けば実に普通のチームになってきた。

3バックのCBがやたらと上がる、とか

後ろが数的不利でも、回す、とか


ちょっと、奇を衒うような事をしていたのが

何とも普通のポゼッションチームになったものだ


これは一抹の寂しさもあるものの

鳥栖が1段レベルが上がったことを意味する。


ポゼッションサッカーというのは

基本的には、自分たちが主語になるアクションサッカーだ。


だから、能動的にチャンスを作りたい。


しかしチャンスを作っても肝心のゴール前に人が足りなかった。

もしくは少ない人数で決めきる質がなかった。



だからゴール前に人数を多く送り込むために

後ろは苦しくても数的不利で回したり、

長くボールを保持することで皆が上がる時間を作ったりしていた。


これは明らかな弱点があり、後ろが数的不利だとビルドアップの出口が見つからず結局岩崎ボーーん!になってしまうことや、

数的不利で回すことで自陣で奪われるリスクが増えてしまうことだ。

しかもGKパギがビルドアップに参加することがおおく、よりリスクは高かった。

の割にリターンが得られなかった。


それをココ最近はボランチの河原か手塚が降りてビルドアップを手伝う。

当たり前だが彼らは流石にパギさんよりパスは上手だ。

パギさんも使わないわけではないが、後ろから出口を見付ける基本構造がパギさん!ではない。

手塚や河原は上手く周りをフリーにするためにパギを使う。


この日の横浜FCは思ったよりプレスにはくる。

しかし後ろが重たいため、1列目を交わせば広大なスペースがあった。


そこをダイレクトのパスを織り交ぜて攻略する様は実に素晴らしかった。


ココ最近失点が減ってる理由はこういう事だ。


じゃあ、得点力不足は?


そこが次のテーマだ。

後ろの人数を増やしたのだから、ゴール前は人が減りそう。

特にFWの小野はどこまでも下がってくる。


人が減るどころか誰も居ない!なんてことも昔はあった。


ここは長沼が解決している。

浦和戦、いやもっと前の名古屋戦からか

彼はワンタッチでシュートを打てる位置に入り込むのが抜群に上手かった。

右サイドで、右利きで、中へのカットインも出来てワンタッチストライカーにもなれるなんて、稀有な存在だ。


しかし、彼のタイミングで入っても攻撃をやり直すことが鳥栖は多かった。


これがポゼッションの呪いだ。


失いたくない。


ボールを失わないことがポゼッションでは無い。

しかしポゼッションサッカーを掲げると、

ともするとずーっとボールを握り続けることが正義になってしまう。


そうするとちょっと厳しそう?というタイミングではやり直すことが増えてしまう。


やり直す回数が増えるほど、FWは、いつ来るのか不安になり、思い切りPAに入って行けなくなる。


ずーっとPAに居て仕事出来るのなら良いのだが、そんなFWはなかなか居ない

まずはDFの目線を切って動き直して、フリーになるのが常套手段だからだ。


で、ココ最近の鳥栖はボールを失うことを怖がらなくなった。


1点目は、岩崎が持って菊地がインナーラップ

躊躇なくクロスも跳ね返される

クロスの跳ね返りには、「上げる」と分かっているから、河原らがプレスに行っている。

そしてクリアミスをまたも菊地が広い躊躇なくスルーパス

ギリギリ通らないも拾った手塚がダイレクトでクロス!

これに長沼が飛び込んでのゴールだった。


良くゴールが決まるまで何本パス回して、と

美しさを誇張することがあるが

それこそポゼッションの呪いだ


もちろんそれはベストだ

しかしそれでなくては行けないわけではない


このゴールは決まるまで2.3度ボールを失っている

それでも前方向に躊躇いなくボールを送ったからこそ生まれた。

そして長沼が入るタイミングでボールを出すからこそ、次も安心して動き出せる。

周りも連動出来る。


ここで仕掛けるよね?という意思が統一されているのだ。

誰かがビビってやり直してたら

支配率は上がっただろう。

誰からも責められなかっただろう

しかしゴールは生まれ無かっただろう。


2点目も同じだ。

こぼれ球を拾った手塚のパスに菊地が前に送る

これは相手に当たりながら河田の元へ。

河田もキープに逃げずにダイレクトで繋ぐ!

これが相手に当たりルーズボールに。

堀米が拾って前にドリブル!


ここも、今は前に行く!という意思が統一されているから、河田も全力で駆け抜けてフォロー


そこに堀米がシュートや長沼のコースをチラつかせながら、天才的なダッシュ&ストップで相手を釘付けにして河田に通す


河田がトラバースのクロスを送り込む

長沼は触るだけのゴールだった。



このシーンは上手くいった3つのパスよりも

その前の菊地、河田の「リスクを追ってもチャレンジしたパス」を褒めたい。



失ってもいい


前に進めるなら


ポゼッションに拘ると前に進めなくなる

飛び込めなくなる


今の鳥栖は失ってもいいもんね

またプレスすればいいし!


ということで前段の守備を安定させつつ

攻撃は増してるという状況を作り出せているのだ


これは個々の頑張りもだが日々の意識付け

特に練習の質が異常に高いことを示唆している。


監督コーチ含めてよほど落とし込みが上手くないと出来ない


素晴らしい仕事ぶりに拍手を送りたい。


最後に失点シーン。

ここもポゼッションの呪いとも言える


ルーズボールでも何とかマイボールにしたい

曖昧で難しいボールの処理はミスが出やすい


河原のパスミス

菊地の判断ミス

(ヒールで反転してキープかパスか?


これは失いたくない気持ちが生んでいる。

失っちゃえばいい


そんな難しいボールなら

同じように難しい形で適当に相手に押し付けるのもアリなのだ


難しいルーズボールになるようにクリアする



相手が「マイボールにしたいなぁ」という難易度の高い処理をするように強制する。


そんなのもクリアの技術。

まあこれは経験もあるし特に

ボールを失うというのは中盤の選手にとっては沽券に関わるものだ


菊地の気持ちも分かる


寧ろこの試合は全てにおいて一対一でクロスを上げさせず、2点の起点となる勇気あるプレーを褒めたい。


今の鳥栖は菊地無くしてはチャンスは激減するだろう。


ありがとう。


さあこうなると普通にリスク少なく攻撃も強い鳥栖がいよいよ完成しつつある。


対策されても、こっちの質さえ高ければ決めれる


だから強豪相手でもゴールは決まるだろう。



問題は「こっちの質さえ高ければ」てとこ。

だから相手が調子悪かったりレベルが低いチームだとしても、ガンガン点が取れる訳では無い。

特に守備に人数掛けちゃえばレベル差はまぁまぁ埋まるしゴールは難しいのだ。


アクションサッカーとはこちらに委ねられるものだ。


がんばれサガン鳥栖!