角田 光代
エコノミカル・パレス

この本が出版されたのは、2002年。6年経って、変わったことはなんだろう。角田さんは、既に直木賞を取り、人気作家の仲間入りをして、多くの人に読まれるようになている。だからといって、世の中が、すべて上手くいっているとは思えない。6年間で、お金持ちと貧乏な人の格差が広がっているのは間違いないだろうし、虚業のようなビジネスもはびこっているし、相変わらずニートと言われる定職を持たない人は減っていないだろう。


かつては夢を見て、アジアを放浪したが、結局得たものは、いったいなんだったのだろうか。”タマシイ”我無い仕事はできないと言い、1年で仕事をやめたヤスオと暮らす34歳の主人公。フランス料理店でアルバイトをしながら、雑文を書いて、何とか生活している。そこには出口が見えない。その料理店で出会った20歳の男性にほのかな恋心を感じ、応援しようとするが、あっけなく断られてしまう。

かつて、アジアを放浪した時のすべてが新鮮だった体験は一体何だったのだろうか。当時はアジア放浪することが流行っていた。そこには、東京で失われている多くのことがあった。しかし、旅をする中で次第に新鮮な体験は失われ、最後に残ったのは自分たちは”どこにでも行ける”という自由さだけであったが・・・


アジア放浪を経験したた多くの若者が持つ、こうした消失感。旅を終えて、”東京”という”たましい”のない場所に戻っても、そこには居場所が無いことへの諦めみたいなものがあるのだろうか。それでも、人は生きていかなくてはいけないのだろう。”東京で”