~ジーナ~
人間が液体になって溶けるという異常な事件が続発しているキスカットの町。
リシェルさんは、アネットの友達のジーナのお屋敷に泊まりたいと言い出しました。
「・・・一応聞いてはみますけど、さっきも事件が起きてジーナのお屋敷は混乱しているんじゃ・・・。」
「そうね、じゃあ直接私が交渉してみるわ。」
そう言ってリシェルさんは部屋を出て行きました。
ジーナのお屋敷。
突然大勢で訪ねてきた私たちに困惑気味の執事さん。
「いきなり泊めてくれとおっしゃられても・・・。」
・・・まあそうよね。
「大変な状況になってるのは分かってるわ、でも私たちは依頼を受けたの。事件を解決したいのなら私の言うとおりにしてほしいんだけど。」
「しかし・・・」
「そう、じゃあ私たちは帰るわ。この町の人たちがいなくなる前に事件が解決することを祈ってるわね。」
あっさり引き返そうとするリシェルさん。
「あの・・・」
声を掛けてきたのはジーナだった。
「どうかされたのですか?私の家になにか・・・。」
「ジーナ。」
私の中に紛れていたアネットがジーナに歩み出ました。
「アネット・・・あなただったの?この方たちは?」
「今この町で起こっている事件を調べに来てくれた人たちよ。前に話したでしょ。」
「ああ・・・本当に呼びに行ったのね。」
「初めまして、私はリシェル。」
リシェルさんがジーナに握手を求めます。
人間に興味の無いリシェルさんが珍しい。
「あ・・・はい、ジーナです。あの・・・それで私の家に何か・・・?」
握手に応じながらさっきの質問を繰り返すジーナ。
「この町で起こってる事件を調べるために協力してもらいたいの。あなたのお屋敷に私たちを泊めていただけないかしら。」
「・・・ここにですか?」
「一日も早く解決したいから。お願いしたいんだけど。」
「ジーナ、お父さんは?」
「お仕事でマルダンへ行ってるわ、明日には帰ってくるそうだけど。・・・おじさまのことを伝えたから・・・」
「リシェルさん、じゃあ明日また訪ねてきてジーナさんのお父さんに・・・。」
「私としてはアネットをあの家から引き離したいって気持ちもあるんだけど。」
「え・・・」
リシェルさんの言うあの家というのは、アネットが今住んでいるお家のこと?
「アネットも一緒に泊めてほしいの、いいかしら?」
「私も?」
アネットには思いもよらぬ言葉で、驚いています。
「・・・分かりました。父には戻り次第私から話します。中へどうぞ。」
「ありがとう。でもちょっと待っててね、荷物はまだアネットの家だから。」
そうでした。
一旦亜ネットのお家に戻った私たち。
ジーナのお屋敷にアネットも一緒に泊まりに行くって言ったら、アネットのおじさんたち困惑していたようだけど。
アネットの家を出る直前、玄関で私たちを見送るアネットのおじさんたちにリシェルさんが振り返りました。
「・・・度がすぎる欲は身を滅ぼすことにもなるわ。気をつけて。」
ふふ・・・と笑みを浮かべたリシェルさん。
穏やかそうなアネットのおじさんたちの顔が一瞬強張ったように見えました・・・。
パタン・・・と扉を閉じて。
「リシェルさん、さっきの言葉どういう意味ですか?」
気になった私はストレートに聞いてみた。
「話す機会が訪れたら話すわ。」
・・・?
どういう機会が訪れると言うんだろう。
すっきりしないものは残ったけど、私たちはジーナのお屋敷にまた向かったのです。
~つづく~