~伝えられた真実~


 キョウスケさまと映画を観ました。

 ユウナさまは「用事があるから」と、今日は同行されませんでしたが。


「女の子はやっぱりラブ・ストーリーとかがいいですよね?」


 映画館に入る前のキョウスケさまの言葉。

 キョウスケさまは私を女の子として見て下さっているのですね。


 私は・・・・・・。


 私も・・・・・・。


 でもそれももうすぐ終わってしまうのですね。



 映画の内容は自然に私の中に記憶されていきます。

 私の場合記憶というより記録という方が正しいのかもしれません。


 私の目はスクリーンより、隣りのキョウスケさまにほとんど向いていました。

 記憶すればするだけ後で寂しい思いをするだけなのに・・・・・・。


 ・・・・・・辛い。


 ・・・・・・悲しい。


 ・・・・・・寂しい。


 そんな気持ちはキョウスケさまと出逢って知りました。

 機械の私にはあり得ないはずの感情・・・・・・。


 

 映画が終わって、いつもの公園でキョウスケさまとお別れです。


「それじゃあ、リルさん」

「はい・・・・・・」


 キョウスケさまは笑顔を見せて・・・・・・。


「あ、あの・・・・・・」


 背中を向けたキョウスケさまを呼び止めました。


「はい、なんですか?」


「・・・明日もここでお待ちしていてよろしいのでしょうか」

「はい。土曜日だから午後に待ち合わせしましょう。それじゃ」


 そう言ってキョウスケさま走って行かれました。

 私はキョウスケさまの姿が見えなくなるまで見送って・・・・・・。



 「・・・・・・リル」


 背後からユウナさまの声がしました。


 「ユウナさま。御用はお済みなのですか?」


 ユウナさまは私の言葉に答えません。それに様子がいつもと違います。


 「・・・ユウナさま?どうかされたのですか?」

 「・・・・・・」


 ユウナさまは何かおっしゃりたいようですが・・・・・・。


 「・・・リル・・・信じられない話しかもしれないけど、聞いて。」

 「はい・・・・・・?」

 「あいつのこと・・・・・・」

 「キョウスケさまのことでしょうか?」


 ユウナさまは黙って頷かれると、お話しを続けました。


 「あたしあいつがどんなヤツか気になって・・・もしかしてほんとに冗談でリルに近づいてきたんじゃないかって」

 「・・・・・・」

 「それで、あいつのこと調べたの。あいついつも制服着てるでしょ?同じ学校に通ってる人にリルのメモリーからコピーしたあいつの写真見せて聞いて回ったの」


 ユウナさまの御用とはそのことだったのですね。


 「・・・それで、キョウスケさまは・・・・・・」

 「・・・付き合うとか以前の問題だった。あいつ・・・・・・」


 ユウナさまの次の言葉は・・・・・・。


 「あいつは事故で半年も前から入院してたのよ!意識不明のまま!」

 「え・・・・・・」


 事故で・・・入院・・・意識不明のまま半年・・・・・・。

 私にはユウナさまの言葉が理解できませんでした。



 ~つづく~