9.国が震災時18歳以下であった方への甲状腺がんの治療費を認めないことについて
(1) 甲状腺がんの治療費を調査・研究として予算計上されていることについて  
① 福島県県民健康調査検討委員会が平成27年5月18日に公表した「甲状腺検査に関する中間取りまとめ」には、「甲状腺検査を契機として保険診療に移行した場合、 現時点では、二次検査以降の医療費については公費負担が望ましい。」 という見解が示されているが、 平成27年3月17日参議院予算委員会での望月環境大臣と中西健治議員のやりとりからは、国の平成27年度予算には、福島県の県民健康調査の甲状腺検査における調査・研究費として甲状腺がんの治療費を計上しているという趣旨の発言がなされている。結果として、甲状腺がんの治療費が無償化となれば良いという解釈もできなくはないが、子育て世代の想いを鑑みれば、調査・研究の名目で実質的な治療費を計上されるという言わば騙し討ちのような国の対応に対して、福島市として毅然と抗議すべきであり、是正を求めるべきだが見解を伺う。
  
  
② 福島県県民健康調査検討委員会では、先行検査で得られた検査結果、対応、治療についての評価について、平成23年10月に開始した先行検査(一巡目の検査)においては、震災時福島県にお住まいで概ね18歳以下であった全県民を対象に実施し約30万人が受診、平成27年3月31日現在で112人が甲状腺がんの「悪性ないし悪性疑い」と判定、このうち、99人が手術を受け、生物学的特性から定期的な経過観察という選択肢もあり得る乳頭がん95人、低分化がん3人、良性結節1人という確定診断が得られている。
    
  こうした検査結果に関しては、わが国の地域がん登録で把握されている甲状腺がんの罹患統計などから推定される有病数に比べて数十倍のオーダーで多い。 この解釈については、被ばくによる過剰発生か過剰診断(生命予後を脅かしたり症状をもたらしたりしないようながんの診断)のいずれかが考えられ、これまでの科学的知見からは、前者の可能性を完全に否定するものではないが、後者の可能性が高いとの意見があった。一方で、過剰診断が起きている場合であっても、多くは数年以内のみならず、それ以降に生命予後を脅かしたり症状をもたらしたりするがんを早期発見・早期治療している可能性を指摘する意見もあった。などと記載されており、過剰診断であると提唱する一部の専門家を除いて、福島医大の鈴木教授をはじめとする専門家は現状の甲状腺検査の水準を継続することを望んでいる。福島市においても県民健康調査検討委員会の意向を尊重すべきであり、国に対しても同様の要望を行うべきだが、見解を伺う。