大佛次郎 作

前髪のある信長(海老蔵さん)。
殿と呼ばれています。
父の法要に参列せず、子供たちと遊んでいます。大きな柿の木があって、柿を皆で食べています。他の子供には、いけないことだと指摘されますが、そのようなことには疎いようです。
父の法要に出ないのは、信長なりの理由があっての事。形式だけの法要には出たくない。
僧覚円(右之助さん)も、林美作守(市蔵さん)も油断のならない人物です。


お守り役の平手中務政秀(左團次さん)は、信長のそのような振る舞いに責任を感じています。
3人の息子達を前に、信長に宛てた手紙を書いています。一字一句丁寧に書いている様子。今夜八ツに腹を切る覚悟です。
3人の息子は五郎右衛門(亀寿さん)、監物(九團次さん)、甚左衛門(廣松さん)です。末っ子の甚左衛門は、悲しみを表していますが、3人とも無念に思っているはずです。

政秀が切腹したのを知り、信長はとても残念がります。爺には、自分の心の内を分かっていて欲しかったのです。
とは言うものの、父を切腹に追いやられ、遺された3人の息子達が不憫に思われます。
雪の降る夜のことでした。
信長の前髪は、この時にはありませんでした。


今川勢が進軍してくるというので、家臣達は気負い立っていますが、信長にはその気は無いので、解散していきました。

山口左馬助の娘 弥生(孝太郎さん)は、人質として信長のもとにいますが、しっかり者の様子です。
林美作守は、人質は始末すべきだと進言しますが、信長は返してしまえと言います。


信長が信頼をおいているのが、木下藤吉郎(松緑さん)です。藤吉郎は、信長に意見するわけでもなく、ただ忠義に厚くお仕えしている感じです。


虫の声が聞こえ、雷の鳴る夜に、信長は今川と戦うため、桶狭間へ兵を挙げることを決意しました。
人間五十年~を舞います。
この時、政秀の3人の息子達も戦いの準備をして揃って来ます。
立派な忠義者の家臣に恵まれていたのだな…
これで、爺も浮かばれることでしょう。

信長は、何にも縛られず、自由に、思うままに生きているように見えますが、重圧を背負い、孤独を表現されていました。


十一世團十郎が海老蔵を名乗っていた昭和27年に初演されたそうです。

ゆったりとした間があり、信長が物想う様が表現されているようでした。
この日、弥生の孝太郎さんは、海老蔵さんに見惚れて、台詞が出てこなかったとか。
全く気付きませんでした


{7D4B8BEE-F3B7-4408-B9C8-1D8E4C2D5DCD:01}