一昔前の母の時代、研究を続けるのなら妊娠・出産は、院生時代にするのがbetterと言われていました。今以上に、女性が研究者としてキャリアを継続するのは困難な時代でした。やっと得た研究職としての職場、妊娠・出産すると研究は中断せざるをえず、周りに迷惑をかけてしまうし、その後の職場復帰は必ずしも保証されない可能性もあったのだと思います。院生時代であれば、休学して研究を中断しても、それはあくまでも「自分」の研究であり、出産後、復学が妨げられることは基本的にはありません。学位をとるまで(大学院修了まで)時間はかかるかもしれませんが、そこからキャリアが始まるので、少なくともキャリアの中断は防ぐことができる・・・と考えていたのではないでしょうか(ただし、計画性が必要)。ただ、母の周りでは、実際にそんな事例はありませんでした。逆に、ある程度キャリアが安定してからの出産を選んだためか、40歳前後の駆け込み出産(?)の友人は複数いましたけど・・・。

 

 さて、今はどうなのでしょうか。郁の周りには結婚後院生になった人とかは、出産された方はいらっしゃるようですが・・・。大学院生の妊娠・出産に関するデータは見つけられなかったので、実態はわかりません。

 

 ちょっと角度は違うのですが、日本は、研究者に占める女性の割合が17.5%で、OECD諸国の中で群を抜いて低いことが指摘されています(男女共同参画白書 令和4年度版,146頁)。また、大学等における専門分野別教員の女性の割合をみると、職位が上がるにつれて女性の割合が下がっていくことも明らかにされています。社会科学系の場合、助手は64.4%なのに、助教で39.0%、教授では15.6%です(「助手」はティーチングスタッフに入らないはず)。もちろん、その原因が結婚、妊娠・出産だけにあるわけではないのですが。

 経験的に、子育てしながらフルタイムで働き続けること自体大変だと思いますし、「研究」というゴールのない課題を追い続ける競争のなかで走り続けること、限られたポストを競い合うことは、よほど熱意がないと続けられないのではないかと・・・思うのです(もちろん、優秀であることが前提ですが)。やはり、どこかに「日本という風土」の持つジェンダーの影響があるのかもしれません。

 今、国をあげて女性研究者を増やそうとしています。大学教員の採用時に女性枠を作る話まで・・・(それもどうかと思いますが)。ただ、出生数と同じで、そう簡単に増やすことはできないのではないかと思っています。

 

 さて、わが家の郁。このままいけば「研究者」になることはないのですが、研究者になるならないの関わらず最近は必ずしも結婚・出産を選択するとは限らない時代。学部の同級生の「彼」は進学せず、春から遠く離れた地で「社会人」となりました。それぞれ新しい生活がスタートした2人の関係がどうなったのか、親としては気になるところですが、余り根掘り葉掘り聞くわけにもいかず・・・。ただ、このGWには会う計画があったようで、とりあえず、まだ繋がっているようです。まあ、今後どうなるかは、いつの時代も「神のみぞ知る」・・・。ただ、正直言って、親の立場としては院生時代の妊娠・出産はお勧めしません。今後の2人を気にしつつ、GWの終わりとともに日常が戻ってきます。