勝負は始まったときすでに勝敗を決している場合が多々ある。

こと就職活動に関して、この傾向は如実に表れていると俺は思うのだ。



今日は春を思わせる陽気につられ、お昼時に軽く梅田を散策していた。


すると。リクリートスーツに身をまとった学生があんなにもたくさん。

もうそんな時期か。

思えば一年前の俺も彼らのごとくスーツを身にまとい将来の希望とささやかな女子との出会いへの期待を胸に梅田~淀屋橋間を闊歩したものであった。


予備校時代の数学の講師が、「その日の体調しだいで試験の点数は二割ぐらい左右される。」とよくおっしゃっていたが、GDにかわいい女子がいるかどうかでGDにかけるモチベーションがいくらか左右されたことは否定できない。


ただ、そんなことを言っていられるのも3月まで。

4月1日からは怒涛の筆記ラッシュ。面接ラッシュ。ディスカッションラッシュが訪れる。

面接を受けるだけ受かる層と、受けるだけ落ちる層の二極化が顕著に表れ、その結果に僕らは泣き笑う。



今回は俺の内定先での選考過程でのGDでの話しである。


GDの待合室。

「あ、どーもー、よろしくおねがいしまーす。」「あ、どーも。」

と挨拶が飛び交う中、俺は一人で精神統一をし、気持ちを落ち着けていた。

以前、他社のGDで「テンションあがってヘイヘイオーライ!俺に従えよカモンジョイナス!」状態になって玉砕した経験があったため、それ以来なるべく直前は気持ちを落ち着かせるようにしていた。



「あ、どーもー。」

そういいながら一人の成人男子が俺の隣に座った。


ん??こいつ就活生!!??

26歳という年齢を聞いてもまだ納得できない容姿を彼はしていた。老けていたのだ。

いや、それ以上に、臭い!!!


半端なくオッサン臭があたりいっぺんを立ち込める。



ちょっ、ちょっとまじきついっ><

少なくともこっちむくなボケ。である。



僕の集中は一気に、この後訪れるディスカッションから、彼の放つオッサン臭に注がれる。もうとにかくその臭いが気になって仕方がない。

つまり、その時点で僕の頭の中を占めていたことは、いかにしてGDでこいつから席を離れるか。ということであった。こいつの隣に座ってしまっては、ドローなら得失点差でイランが勝利という大事な一戦をアウェーで戦わねばならない状況よりも分が悪いという、圧倒的不利な状況に追い込まれてしまう事は目にも鮮やかであった。


そして、ついに俺らのグループ6人が呼ばれる。待合室からディスカッションが行われる部屋へ移動することになった。



ディスカッションルームのドアをあける。

俺は十分に彼との間合いを取りながら机まで歩み寄る。彼の2m後方をゆっくりと慎重に歩く。そして「悪魔のレディーファースト作戦」でグループ内唯一の女子を俺と彼の間にもぐりこませる。卑劣といわれようとここは引き下がるわけにはいかない。ここはもう戦場である。

最も望ましいフォーメーションは彼の対角線上に座ることであるが、最悪彼の前と横を逃れることができればそれでよかった。


周りはそんなことは全く意に介してないなか、俺はたった一人の戦いを強いられていた。そして俺はその戦いに見事勝利し彼の反対側に座ることができた。





今思えば、ここが俺がこの会社に内定できるかどうかの分かれ道であったのだろうと思う。



人生の節目・岐路とは、案外何気ないことであることが多い。

だから,普段の行いが大切なのだ。



P.S

これを機に、これからたまに全く参考にならない就活体験・応援日記を更新しようと思う。

そしてその時の文体はこのように「だ。ある。調」になることを断っておく。