匂い | monday books

匂い

ぼくは目を使って仕事をしているけど、本当は鼻で感じて広がるイメージのほうが強い事を知っている。ごまかしが効かないのは圧倒的に嗅覚だ。

ダイニングテーブルが仕事机でもあるので、キッチンで過ごす時間はながい。
まだ8月だというのに、一昨日から一気に秋の気配がずどんと落ちてきた。
いま住んでるアパートには秋に引っ越してきた。不思議と秋には秋のこのアパートの匂いがあって、引っ越し当日のことを思い出したりする。そして何の足しにもならないような、この文を書くきっかけになったりもする。すこし感傷的になりそうなので、コーヒーをいれて、日常の匂いを、そこに混ぜてみよう。きっとあたたかい気持ちになるだろう。音楽もラジオも今日は要らない。薄鼠色の空をみて。陽の光を欲しながら。