天然の鍾乳洞のようだった。
崩れるような罠はないだろうが、冷え冷えとした空気が漂う。長い階段を上り、扉を開けた。水滴が冷たかった。
これが、地下四階…………。どこからか、風も吹き込んでいる。
整備された通路にて、わらわらと襲い掛かる魔物・モンスター群。
 ぼくらをとどめてみろよ?
ソードイド×三体の突撃を迎え撃ち、時々ニフラムで光の中に昇天させる。残骸から【ふぶきのつるぎ】を獲得。
もはやマントゴーア×三体とも、ドラゴン×四体とも、敵ではない。
大魔神やサラマンダーに群れられると、少々手を焼く程度で。アークマージは真っ先に蹴散らすけど。
橋が、見えた。

「ー」

辛うじて、アークマージ・・・のような姿をしていた。
何度も復活しては、叩き殺され、切り刻まれ、挙げ句の果てに烈しく焼かれたのだろう。
歪んだ面体を、隠そうともしない。
*「さがれ……。
「ですが、こちらにおびき出せております」
どうでもよかった。一部始終を暗視していた。
敵わないのならば、引き際よりも、後始末に徹すればいい。バルログの口封じをした。それで役目としては十分だった。

*「さがれ といっている。きこえぬのか?
「……」
低い呻き声。アークマージらは、屈辱に塗れているだろう。足掻くな。それでいい。沸き上がり、噛み締めているその力を、我に寄越せ。
勇者あにへ反撃する機会は、おそらく無いであろう。ゾーマから止せと言ったところで、抑制できず、返り討ちに遭い同族の数を減らすだけだ。

復讐しよう…などという試みは、溜めておくものだ。自らの中に黒々と何かが渦巻くまでは、足掻いたところで、何も身にならない。
内部で満たされてきた暗い力が、いずれ味方になる。その刻までは、待つなり耐えるしかない。
闇の住人の本分ではあるが、吐き出すばかりでは、魔王の影に堕ちてしまうだろう。
*「なさけねえったらありゃしねえ……。ちったあ あたまを つかえよ。
「バラ……モ…ス?」
*「…。
一つだけ篝火が燈り、浮かび上がる…バラモスの姿。
犬猿同士の手下。一瞬で空気が張り詰め、凍える程の溜め息が出た。
*「どうしようもない ってのは まさに アークマージみたいなのを いうんだな。
*「ガッシャシャシャ……。
「ほう?それは『兄者』を越える、提案があるとでも?」
アークマージの語気に何かが漲る。
*「てめえっ!
*「ものども ひかえよ。
同士討ちは、力にならない。


続く