場違いだという視線があった。
全てのものに、労われている訳ではない、そう感じた。
いつからか警戒されることを避け、常々…
『報告は伝言ではない。間違い無く伝える為には、バラモス様に直接申し上げなくてはならぬ。』
見せかけの忠誠心を、貫き続けた。聞き入れない輩とは戦いの末、捩伏せた。自然と、慕ってくるものたちも居る。
懐に入ってしまえば、あとはこちらのものだ。
今のところ、うまくいっている。城にも辿り着けたし、案内も乞うことができた。対面は、もうすぐだ……。待っていろ。

「ー」

*「またれよ。
「…なにか?」
橋を渡り切った行き止まりで、眼鏡をかけた石像が実体化する。見上げた。
*「だいまおうバラモスさまに くみするものよ。 じつりょくは いかほどのものか?
「さてはて…人型ゆえ、キラーアーマーや地獄の騎士は相手になりますまい」
*「ほう……。 なまえを なのるがよい。
「ござませぬ。名は、捨てましたゆえ」
悟られてはいけない。背中を、つっ…と冷たいものが伝う。
*「とおすわけにはゆかぬな。
「なんと!?バラモス様に直々に報告があるというのに?」
*「ごくろうだった。 ここで わたしがきいてやろう。 はいびにもどるがよい。
「…わたしは うえのせかいから きたのですぞ?
 そこでの できごとを だいまおうさまに ちょくせつ ほうこくせねばならん」
それでも通さないつもりか。意地と、賭けだった。
覆面の下から、隠してきた殺気を放った。
*「……。
ありありと、迷いを表した。
通り抜け可能な一瞬を、見逃さない。
「では行きますぞ、こちらは行き止まりのようだしな…」
*「またれよ。

ゆっくりと、振り返った。全身が、何か重い物を背負ったようだ。
それも、悟られてはいけない。
*「かってはできん が。 じつりょくを みせてもらう。 それならば……おそらく もんだいは ないだろう。 どうか?
「…望むところですな」

*「なにをしてる?
*「ひとがたか?
*「そいつ なんか……きずだらけじゃねえか?
*「どうでもいい。
*「なかまわれか?
*「……ねむい。
*「おお ヒドラか? ちょうどいい。
 ちょっと このものと てあわせしてくれるか…………?
*「ほう?
*「はあ?
*「てめえ しんでも だまっとけよ?
*「……ねむい。
*「かげんするなよ。
*「いいのか?

覚悟は決まった。
温存は、もうできない。


続く