弱りゆく呼吸の音。
耳を塞ぎたい。
「可憐が、ちゃんと聞き届けます……から」
「あにさんチャマには必ず!四葉が伝えマス!」
*「すまない……な。
再び、少しの静寂。
今、僕はなにをしてる?震えている?どんな顔をしてる?カンテラが、何を映し出している?
息も絶え絶えの、覆面姿、オルテガ。
あにの、父親が、たおされていた。
四人の視線は、彼に注がれている。
僕は、彼の傍に寄って、看取っていいものか。躊躇った。
ごめんね。僕は何も出来そうにないね?きっと。
でも、貴方は強かったよ。行く先々で噂に聞く、貴方の姿を想像していたよ。どんなやつなのかって、知らないから、さ。
ネクロゴンドの火山近くから、アレフガルドに通じるあの穴に落ちて、一命を取り留めたんでしょう?ラダトームで、助けられたって。聞いていたよ。タフなんだよね、父さんは。
その前に、ポポタ……って隠し子だよね?
何してんだよ!?
ん、まぁ…もう赦すしかないけどさ。
リムルダールの西から、まさかとは思うけど、ゾーマの城を目指して泳いたんだろうな。豪快だよ。誰も真似できないよね?
しっかりとその姿が、リムルダールの人達に目撃されてるよ。海の藻屑と消えたとか、島の西の端で佇んでいたとかさ。
あとリムルダールの戦士サマは、父さんからの預かり物を、管理すらしていなかったよ。戦士サマは、所詮…戦士サマだね。
赤いヒドラとは、善戦したよね。途中からだけど、見ていたよ。迫力があったよ。他人の殺気は、凄みがある…ね。
父さんは、パワーファイターだったね。呪文も幾つか駆使してたけど。
鉄系装備で、渡り合うなんて…、渡り合うなんて……悲しいぐらい、カッコイイよ。格好良かった!
腕力に自信が無ければ、あんな…立ち回りは、できねぇ!
けど、もう……。
肩に手を触れてみた。火傷だらけの、傷だらけの、逞しい躯。
視線が、注がれていた。

「ー」

断続的に磁場に満たされている。
*「なんだ? これは……?
容量過多なエネルギーが勢い良く、ゾーマに注がれた。
はじめにあったものより、上質なものが次に、何かと混合しながら渦巻いている。悲壮とは言い切れない、力の色合い。
全てを吸収したくない。なぜだ。
バラモスの仕込み、以外のところか。それともアークマージだろうか。上手く暗視できない。
鋭敏に研ぎ澄ますまでは、いましばらくかかりそうだ。
探るのは止めた。
蓄えることに、集中せねば。


続く