思い直した。
彼の人を、待ち焦がれ続けていた。偶然なる目撃と、衝撃の再会・・・。目の前で*なれたのだから、幾つもの感情が怒涛の如く沸き上がり、残る。
喜びの感情や気持ちも、相当な力強さはあるだろうが、アレフガルドでは負の悲しみや絶望が、勝っている。
「こんなにも……」
残酷で皮肉過ぎる程に、陥ってしまうのか。
何が起きても、なんだかんだで飄々としていたあにが、今、どこを見上げているのだろうか。

ガルナの塔から頭角をあらわしている勇敢さは?
防御攻撃の閃きは?
ルビスの塔に至る導きは?
命の指輪をくれた優しさは?
行軍が困難な地帯での粘り強さは?


「……」
僧侶ということを、忘れてしまっていたことに気付き、頬が熱くなる。
慈愛に満ちた職業…パーティの大黒柱だということを。神聖さは、まだ未熟ながら。
オルテガも、あにも孤独だったろう。
オルテガは手の施しようが無かった。としても、あにはどうか?
私達が、一緒に居る。
 わたしに できないことなんて ない
「あにさん?」
声を紡ぐ。
可憐自ら…いいえ。パーティのみんなで受け止めて、あげなくちゃ。
衛と四葉に視線を返す。伝わるかな。

「ー」

これは無理だ。
混ざり合った感情を、制禦できそうにない。
いいだろう。
もっと狂える。まだ、まだこんなに沸き上がるんだから。ははは。
ゾーマをぶっコロシたい。どうして赤いヒドラと戦った?もう少し時間があったら何とか出来たかも。ドSゾーマをぶちコロシたい。隼の剣で切り刻んでやりたい。顔から、手から足から。可憐たちと別れるべきだろうか。
全身が熱い。胸が頭が背中が腹が顔が・・・なんだこれ?体を二つに折り、屈み込む。どす黒いようなものが、捏ねくり回されている。中に?なんだよこれ?
おえああ・・・何かが生えてきそうだ。狂える。体内からばらばらになってしまいそうな感触。ヤバいかな。
かああ・・おえああ・・・
猛烈な吐き気が襲い、キアリーとニフラムで浄化を。いやそんな甘いもんじゃない。覚悟してあるんだから、決意に基づく僕なのだから。待ってろよ母さん。ゾーマをさ……。
全身を蝕む感情。鎮まらない。殺気の膨張と、揺らぎ。
*んでしまいたい。こんな血が、どうして?ごあああ・・・無茶だ!馬鹿な!まだだ……!ゾーマをコロシてからだ。
おえああ・・・。
嘔吐と共に吐き出せた。気がした。再び全身に感情が漲る。
今度こそ、何か生えてきそうだ。


続く