全身が痙攣していた。
悪寒に襲われたかのように、震えていた。
地面に額を擦り付けているあにを抱き起こす。
頭を引き寄せた。
どんな姿をしていてもいい。
囁きと、抱擁。
返事は無く、何か断続的に唸り、振りほどこうともがかれる。力いっぱい抱きしめた。
右肩と右腕を、衛が押さえるように拘束した。そして囁き。
憎しみに、負けないで。
痛み。背中を掴まれた。もがきは止まない。胸の辺りが熱くなってきている。吐息と、涙だろうか。
噴き出して来る感情は、私達が受け止める。
左腕を取り、その掌を握り抱えた四葉が自ら、あにの腕の中に滑り込む。

本当の共有とは、きっとこういうかたちだろうか。さっきまで、オルテガの生き様と散り際を、衛達と眺めていただけだ。恥じた。冷静さが、申し訳無いように思う気持ちも溢れた。
どうにかしてあげたい。すぐに何か言ってあげればよかった。

「ー」

磁場から離れたくなった。
*「なんだ・・・?
すぐさま意識を切り離し、闇を見つめた。
暗視。階下にも何か不具合が、あるはずもなかった。
磁場から注がれて身に宿り、蓄えられたものも、変わりようがない。漲っているが、不純なる何かと混ざったかもしれない。舌打ち。悲壮は充分に喰った。快い程の涙で潤った。憎悪が不安定に満ちてきた。
磁場の調子がおかしくなる。そんなことはあってはならない。
アレフガルドは、予が統治している。
精霊ルビスとは禁忌の呪い合戦の末で勝利し、幽閉。手下の慰みものになったろう。
人間を絶望で包み込むことに成功した。
あいつらは なにもできん。
だが、その中で勇敢に挑み、抵抗するものは次々に血祭りにした。人間の希望を奪い取る……快感。あの頃に精製されてきた嘆きは、極上だった。
われをおびやかすものは なにぞ?

「ー」

忘れてはいけないことを覚えた。
いやあ、お恥ずかしいことに、気を失っていたようなんだってさ。
介抱されてた記憶が、無い。断片的には覚えているけど、感覚でしかない。どうしようもなく沸き上がる怒りや、悔しさの中で…それが鎮静化するまでらしいんだけど、嬉しくない記憶喪失だった。
色々と、口汚い言葉遣いだったそうで、ここは反省したい。ごめん!
あー、あの抱きしめられた時の柔らかな、***感触を、もう一度取り戻したい……。
視線。
「……声に出てマスよ?」
「やだ……そんなつもりじゃ…」
「もー、あにさん?」
シラフには、戻った。


続く