肚の内に漲ったものは全て吐き出した。
毒素のようなものだったが、揺るがない覚悟に似ていた。
おえああ・・・
シラフに戻ったが、怒りと復讐心を忘れたわけではない。
忘れてはならないことばかりが、一気に押し寄せたから。だろうか。
誓うように、思いを馳せるのは、瞬時にできる。いつでも沸騰してやる。
だが、そればかりにとらえられるわけにはいかない。
泣き顔の跡が熱い。
曇ったこころの代償は、抱えきれない。
確かに周りが見えなくなった。どうにかなってしまいそうな勢いに任せかけた。誰かのせいにもしたかったし、ゾーマを斬り捨てなければ、もう息をしたくない。強く、強く沸いた。あの時はそうだった……と、言い訳。
衝動に似た狂気と、垂れ流しになった殺気を、可憐達が、修正をかけてくれたお陰だ。
あに自らではどうしようもなかった。オルテガの死と、まものの血による破滅への目覚めを、鎮めた。悔しくて、こっ恥ずかしくて堪らないが、救われた、と思う。
忘れないことで、強い意志は残った。
オルテガの弔い合戦にも憧れるが、それらを乗り越えなければ、この先の導きは湧き起こらないだろう。そこにのみ、留まる訳にはいかない。
可憐らのお兄ちゃん捜しが……今更だが、目的が無くてはパーティは間違いなく、ここで自然消滅していた。あにも狂ったのち、見事に散っただろう。
身震いをした。
 ああ  やばかった。
彼がまだ行方不明なことに、心の中で感謝した。何も狡いとは思わなかった。
だが可憐達に、アリアハン待機組に、是が非でも引き合わせたかった。礼を尽くし、報えるのは、それしかないように思う。ならばそれを貫く。
覚悟を、見せるよ。
怒りや、憎しみは漂わせるだけにしよう。もしくは、奮起のきっかけに。

「ー」

短く礼を言った。
何度かの遭遇戦をこなしたら吹っ切れた。
恥ずかしさと共に、不確定なことがもうひとつあった。
果たしてゾーマは…………、情報を持っているだろうか。
考えれば、考えるほど高鳴る。
二つ目の扉、カンテラに照らされて輪郭をあらわしてきた。
【宝物庫】とあるが、欲しい宝は、もう無いだろう。魔物・モンスターから得た武器防具も、価値はあるだろうが、荷物になるだけだし。
罠がある。天性のカンがはたらいた。


続く