*いでよ! わがしもべたちよ!
*そのほうこうには  だれも  いない*-100827_1437~030001.jpg
どこからか飛翔してきた赤いヒドラ……、多頭族【キングヒドラ】が正面に、その姿をあらわす。
こいつ、首に傷痕がある。忘れるものか。台座からの跳躍。
まもるが首一つ、よつばとあにで首四つ、最後の首をかれんが、胴体より切り離す。一斉攻撃により、防御反撃の暇を与えない。
着地も鮮やかに決めた。
少し遅れて、キングヒドラの屍体が落下してきた。床に沈むように、跡形も無く消え失せる。
復讐だとは思わなかった。斃すのは可能だと思っただけだ。
「こんなもんか。…次は?」
静まる玄室。正面にゾーマ。まさか、これでお仕舞いではないだろう。
ゆっくりと、前進した。

「ー」

微かに聞こえた。
聞き覚えのある、詠唱のようなもの。
「防御!散って!」
全員を蹴飛ばす勢いで前に出た。
篝火からの方向。
空気中の爆発、イオナズン。
上からの爆発を避けきれなかったが、そういう呪文だ。効果的な詠唱だと思った。
「こいつ…」
「バラモス…チャマ?」
「まさか」
「【バラモスブロス】…?」
似ているが、色違いだ。兄弟なのかもしれない。
*「きさまが あにか?
「…そうだよ。どいてくれる?」
冗談が通じるだろうか、あには本気だった。
行く手を塞ぐなら、邪魔するならば、戦い、斃す他は無い。殺気を、内に秘めた。
キングヒドラを斃した時よりも、何かピリピリと張り詰めている。気がした。磁場・・・だろうか。
*「あにじゃのかたき このわしが はらしてくれようぞ。
篝火が揺れていた。
「チェキ?」
「バラモス?」
「会話の糸口それですか?不意打ちしておいて!?」
バラモスよりも不可解だ。懐柔する気も無かった。好戦的な相手は、戦わなければ、分からないこともある。

 あにがかなわなかったことを おとうとがかなえることが できるものか
 あにをこえるのは なみたいていのことでは ない
 おまえは あにのあとを おっているにすぎない
 おまえがあにを しのぐことなど できるはずもない

声も上げず、仕掛けた。
一斉攻撃を一身に受けたバラモスブロスが仰向けに斃れた。呆気ない。
*「ちくしょう・・・。
「努力が足りなかったね」
「甘いデス!」
「成仏……してくださいね?」
「……」
今更、負けの味を舐めるとは、哀れすら覚えた。
 はやく ぜつぼうをみたせ ただようだけではたりぬ


続く