屈辱の思いとバラモスへの羨望。
意識を呼び戻す。
冥界への誘いを、振り払った。
今、魂魄が尽きてしまえば、兄弟揃ってゾーマにいいように使われてしまう。
 ふざけんな
上体を起こそうと、試みた。全身の震えを抑え切れない。漲る爆発力は、どこに失われてしまったのか。
「まだ立ち上がるの!?」
「その諦めないココロはチェキデス!」
我らの叫びは、統治への野望は、ここで終わる。
馬鹿な。
立ち上がろうという意識だけが生きている。深く切り刻まれた両腕が、動かない。
再構成・・・磁場への嫌気。物凄い吐き気も催す。鼓動は細く、既に死に体だった。
誰にも何にも認められず、讃えられず、そして消え失せるなどとは、誰にも何にも報えはしないだろう。兄者……。
奮起の先。成り振り構っていられない。姿形が、どう映ろうと、どのような結果になろうとも、悔いだけは残してなるものか。我が生き様は、我がでしか示せん。
ゾーマよ、ざまあみろ。
おまえらの こころのなかで あばれてやる


 ちからをかしてくれ
 ・・・はやくいえよ

 そっちはどうだい?
 まけるきが せんな

 てがみすまなかった
 …きにしてはいない

 ・・・・・・
 なにもいうな これは しぬよりつらいぞ

「ー」

小刻みに震えていた。
バラモスブロスの腕が、自らの胸を突き刺した。ように見えた。
なぜそんな表情をした?自害?介錯は、しないぞ。
濡れ雑巾を打ち付けたような、硬いものを砕いたような嫌な音を聞いた。その後、サラサラと砂の如く、床に吸い込まれてゆくバラモスブロスの骸。
「何だったんだ?」
「さあ……?」
何も起こらない、ゾーマを見据えた。
「おい、テメー」「聞かせろ」「情報を寄越せ」「この娘達の兄を捜している」「連れてこい」
斃す前に、語るだろうか。
*「われは とりひき などせぬぞ? ほしいものは うばえ!

「何!僕の思考を読んだのか?」

*「あ?

「あにさんっ?自分で」
「喋っちゃってるデスヨ」
「可憐、ならば…ゾーマさんを斃します!」
*「いいぞ・・・。 じょうしつな ぞうおだ。 むすめ。
可憐が、しまったという表情。
感情を、制禦しながら戦わなければいけないだろうか。負の感情の高まりが、ゾーマの力を増幅するかもしれない。
アレフガルド・・・このドS野郎が。

*「ときに・・・。
もうすこし ちこうよれ。
罠か、磁場か。一歩は、踏み出した。


続く