戦慄を顔にも出さなかった。
光の波動で、呪文の効果を消される。幾度と無く、マヒャドに凍えさせられ続けていた。水鏡の盾を構え直す。
全て奪われ、滅ぼされる。歯の根が合わない。
恐怖を覚えた。同時に、乗り越えたい。このアレフガルドに巣食う、負の連鎖を断ち切りたい。
だが、対峙してみてどうか。いったいどうすれば?
こちらの攻撃呪文も、期待は出来ないし、MPは回復に充てたい。斃されてしまえば、パーティ壊滅の口火となってしまう。
衛に励まされ、四葉に壁役になってもらいながら、可憐は耐えていた。
充分に、光の波動を見極められたと思う。こちらも何か、……動き出さないと凍えそうだ。

「ー」

あにの集中を乱さない。
可憐と、ディベートをしていた。
消されてしまう呪文は、詠唱する必要が無い。
無い。となると心許ないが、割り切ってしまえるだろう。
攻撃と防御、回復呪文のみでの単純戦闘・・・だと、ゾーマの三回行動により、消耗は激しいが。力の盾と、連係でそれは補い合える。
あに一人にのみ、これ以上の無茶はさせたくない。

可憐は、動き出せますよ?

絶望をなくすことが出来れば、アレフガルドで会えるかもしれない。

ボクいつでもいいよ!

とても大切で、譲れないもの。

あの背中を、追いかけたいデス!

全身に漲るのは、希望。視線を、交わし合った。
「迎えに行こう」
三人で、駆け出す。

「ー」

凍てつく波動の後に、マヒャド二連発をした。
駆け出してきた三人組の、動きを止める。近付けまい。孤立している勇者との連係など、させはしない。勢いは良いが、動きを把握していないとでも思っているのか。
分断の快感。甘さを、そして無力さを噛み締めろ。
そして絶望が満たされれば、それでいい。滅びる為に刃向かうのだろう。馬鹿めら。
*おわりだな……。
「勝手に決めるな」
*あしでまとい なのだろう?
「疲れているのか、ゾーマ?」
しぶとい。挑発の返答に、必ず探りを入れてくる。弱音を吐かず、反骨心さえ見せる。
*あきらめろ。らくにしてやるぞ。
「何改まってんだ?何かの、時間稼ぎかい?」
*いきも たえだえなくせに…… いせいのいいことを いえるものだ。
表情は、何も諦めていない。こういう者こそ、滅ぼし甲斐がある。


続く